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“残るもの” を作りたい ー トレンドを追いかけ続けたデザイナーが、作品づくりに込めた想い【後編】

画面いっぱいに、生命力あふれる植物を描くMIHO KAWABATAさん。後編では、MIHO KAWABATAさんが感銘を受けられたという「日本的な美意識」や「ありのままの美しさ」について、そして今後の取り組みについてお話しいただきます。

大きな影響を与えてくれた、日本的な「美」の捉え方

—— 道ばたの草花に目を向ける ー その想いはどこからくるのでしょう?

おそらく、デザインをやり過ぎているんだと思います(笑)。

仕事がら、いつも注意を引くことばかり考えているじゃないですか。でも、考えても考えてもトレンドって一過性のものですし、またすごいスピードで消費されていくものでもあります。それを仕事にしている自分が、こんなことを言うのは矛盾してはいるんですが。

仕事がそういうものだからなのか、それとは違う「普遍的なもの」や「長く愛されるもの」に心惹かれるのかもしれませんね。

—— いつもとは違うものに、惹かれてしまうのではないかと。

はい。あと、歴史も好きで、趣味で日本と西洋の美的感覚の違いなども調べていて。

西洋って、とにかく持っていること、大きな家をたくさん持っているとか、たくさんの調度品に囲まれているとか、「たくさん持つことが美徳」とされているんですね。比べて日本には、逆に「持たないことが美しい」、そういう考え方があります。

—— 持たないことが美しい。

はい。日本の家屋を例にあげると、家具の数はすごく少ないですよね。あと日本の家具には、ひっくり返しても「本来の機能が失われない」という面白い特性もあるんです。

例えば、座布団やお盆って、ひっくり返してもそのまま使えますよね。でも西洋の家具はそうはならない。天地や左右が決まっていることが多いので、左右逆にしたり、ひっくり返してはその機能が失われてしまうんです。

家具が最小限であることや、ひっくり返しても同様に使えるという「シンプルな意匠」が、日本の「削ぎ落とされた美」だと言われています。その辺に咲いている野花を茶室に飾ってお客さんをもてなすように、シンプルに、ありのままの美しさを愛でる、その感覚が素敵だなと。

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—— “素朴な美しさ” などは、まさに日本らしい表現ですよね。

日本におけるものの見方には、一部独特なものがあって。たとえば「能」や「狂言」では、主人公は「通りすがりの名もなき人々」です。昔話も、「あるところに、おじいさんとおばあさんがいました」という一文から始まるように、登場人物はどこにでもいる人々。

昔話を通して私たちは、「名もなき普通の人々に起こった、ちょっと特別な体験」を追体験することができます。王様でもお姫様でもない「名もなき普通の人」と「自分」とを重ね合わせて、「特別ではない、普通の私たちが主人公なんだ」と、そんな風に思わせてくれる日本の美的感覚、素敵ですよね。

—— 普通であることがむしろ「良い」という感覚なんですね。

ブルーノ・タウトやロラン・バルトらがその著書でも指摘していることですが、日本の機能美や装飾しない装飾、記号的な思考(例えば、自然をありのままに使った借景や懐石料理におけるアートと実利の混在など)には、私も非常に感銘を受けています。

日本人が潜在的にもっている「自然と共存する」精神を、ひとつの「価値」として見出した西洋諸国の人々の視点も、私に大きな影響を与えてくれたと思っています。

MIHO KAWABATAさんの作品

絵を見ることが好きだから、皆にも絵を楽しんでもらいたい

—— イラスト制作と作品づくりと、双方で絵を描いていますが、どちらのほうをメインにやっていきたいなどの希望はありますか?

どちらか一方に決めるのは、すごくむずかしいですね。

デザイナーとして長く働いてきたことで、「人からアドバイスをもらいながら、よりよい方向へ改善していく」という思考のクセがついてしまっているところがあって。また、画家といわれている方々のように、ひとりで黙々と描いていくというのも、想像するとちょっと寂しいなって思ってしまったり(笑)。

以前にイラストの仕事で、マスキングテープのイラストを担当させていただいたことがあったんですが、そういったコラボレーション的な働き方は、自分に合っているのかなって思っています。

—— MIHOさんの「作品」をつかって、商品を作っていくということ?

はい。過去にパッケージのイラストなどを担当させてもらいましたが、個人的には子ども向けの商品に使ってもらえたら嬉しいなって思っています。とくに絵本とか。

—— 絵本ですか?

絵本や童話は、自分でもよく買っていますし、集めてもいます。

そもそも絵が好きなんですよ。現代美術なども好きで、絵を見ることに対する欲求というものが、自分にはすごくあるんです。だからなのか、自分の作品に関しても、「絵を見て楽しんでもらえる媒体」に使ってもらいたいと思うんだと思います。

—— MIHOさんご自身は、どんな絵本が好きなんですか?

エロール・ル・カインの絵本は本当に好きですね。まるで装飾のようなビジュアルで、もう見ているだけで幸せな気持ちになれます(笑)。装飾のコテコテ感と、でも全体的にはフラットな表現で、本当に好きです。あとは、ウィリアム・モリスやジョン・バーニンガムの作品も好きです。

—— なるほど。MIHOさんの作品のルーツがわかった気がします(笑)。

絵本作家ではないですが、ジョン・ガリアーノも好きです。やっぱりコテコテが好きなんですよね。作家でいえば三島由紀夫。好きな人たちの名前を並べていったら、みんなコテコテな人ですね(笑)。

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各分野のプロとコラボレーション ー そんな働き方がしたい

—— 今後は、どんな活動をしていきたいと考えていますか?

ひとつめは、テーマに沿った作品づくり。これまで、明確にテーマを決めて描くことはなかったので、テーマを決めて、それに沿ったシリーズ作品を作っていきたいです。

展示については、作品はけっこうマイペースに描いているので、2年スパンくらいで友人といっしょに展示ができたらいいですね。

ふたつめは、先ほどもちょっとお話したコラボレーション。絵本や童話、プロダクト、媒体は何であれ、その道のプロの方々と関わりながらものづくりをやっていきたいです。

マスキングテープのイラストを担当したときのように、イラストは私が担当して、どのような配置でイラストをおくかとかデザインのパートは別の方が担当する。それぞれのパートをその分野に長けた人たちが担当して、ひとつのプロダクトを作り上げる。そういう関わり方、仕事の仕方には憧れています。

—— MIHOさんの描く「作品」をつかって、コラボレーションをしていきたいと。

はい。デザインをメインでやっていたころは、自分が本当に描きたいものというより、描けるもの、できるものを描いていました。

そうではなくて、自分が心から描きたいものを描いて、それを世の中に認めてもらいたい。そのひとつの手段が、作品集や絵本・童話の挿絵として、自分の「作品」が長く残っていくことだと思っています。

私の作品を気に入ってくれる人たちと一緒に、「残っていくもの」を作っていきたい ー そういう意識で今は絵を描き続けています。

—— “消費されるもの” を追い続けてきたMIHOさんが、長く残っていくものを作りたいと思い始めた「作品」づくり。対極を知っているからこその深い想いが伝わってくるインタビューでした。MIHOさんの作品が広く世界に広がっていくことを楽しみにしています!本日はありがとうございました!

文・写真:mecelo編集部

MIHO KAWABATAさんインタビュー 前編はこちら

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