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“自分の手で何度でも光を取り戻せる” —— 僕が目指す「LOVE & PEACE」のカタチ【後編】

心温まる作品を通じて「LOVE & PEACE」のメッセージを発信し続ける あべせいじさん。後編では「光る絵」シリーズの誕生秘話から、“光” に込められたメッセージ、そして今後のチャレンジについてお話いただきました。

絵が人の気持ちを明るくさせ、人生を変えるきっかけになったら ー そんな想いから生まれた「光る絵」

—— 最近は、青色が印象的な作品を多く描かれていますね。

こちらは個展のために描いた絵で、自分の好きな場面だとかすごく感動した出来事だとか、そういったものをボトルに詰め込んでおけたらいいなと思って、描きました。

ペガサスが満点の星空を駆けていたり、クジラの島に灯台があったり、ゾウがオーロラの中を気持ちよさそうに飛んでいたり。ちょっと空想っぽいシーンが多いのは、現実では不可能なことでも絵では自由に表現できる、その素晴らしさを伝えたくて描いているところがあります。

色については、今とても好きで使っている青色の絵の具があって、それで描くことが多いので、青の印象が強くなっているのかもしれません。

あべせいじさん1

—— ボトル瓶が描かれていない絵もありますね。

ボトルを描いていない絵は、ボトルの中を覗き込んだときに見える世界をイメージして描いています。ゾウがオーロラの中を飛んでいる絵は、ボトルの中にゾウを閉じ込めてしまうより、画面いっぱいに描いた空の中をゾウが飛んでいる方が自由そうでいいなって思って、あえてボトルに入れるのはやめました。

実は、このシリーズには秘密があって、明るい場所と暗い場所とで違った楽しみ方ができるようになっているんです。WEBサイトの画像やポストカードでは分かりませんが、原画は暗いところで一部が光るようになっているんです。

—— 絵が光るんですか!?

そうなんです!なので、このシリーズを展示しているギャラリーでは、四面の壁を真っ黒に塗った小部屋の中に作品を飾っていて、部屋の中で電気を消すと絵がキラキラ光りだすのを体験できるようになっています。実はこうなっているんですよって、お客さんに説明しながら電気を消すと、「わぁー!」と喜んでいただけることが多くて、それが本当に嬉しいですね。

空間の明暗が変わると、それに伴って絵の見え方も変わっていく。一般的なギャラリーや美術館ではなかなかできない、おうちや生活空間ならではのアートの楽しみ方だなと思っています。

—— これは、ぜひ直接原画を見なくては!ですね。

ぜひ見ていただきたいです。ボトルシップのオーロラの絵も、明るい空間で見るのと暗い空間で見るのとでは、印象が全く違います。どちらかだけでは、作品の良さも半分になってしまうと思います。

あべせいじさん2

—— なぜ、絵を光らせようと思ったのでしょう?

鹿児島の民家で展示をするというグループ展に参加する機会があったんですが、展示場所を提供してくださったオーナーさんがご高齢の方だったんです。

そのオーナーさんから、高齢の一人暮らしということもあり、夜の暗闇が寂しく、また足の具合がよくないので頻繁に外出することもできないという話を聞いて、暗闇の中に絵で明かりを灯せたら、寂しい気持ちを少しは元気づけることができるのではないか。そして、星空や花火の絵であれば、外出するのが難しくても、室内でそれらを楽しむことができるのではないかと考えたんです。

ただ、アイディアはあっても、それを実現する方法はなかなか見つからず、試行錯誤をくり返しました。ようやく蓄光塗料というものに出会って、これを絵の上にのせたら暗いところで光るんじゃないかって、ひらめいて。そうして完成した、蓄光塗料を使った絵を鹿児島のオーナーさんの元へ届けたら、すごく喜んでくださったんです。それがとても嬉しくて、それ以来この「光る絵」は、自分のスタイルのひとつになりました。

—— 素晴らしいお話ですね。また、お話の中で あべさんの作品との関わり方が、とてもデザイン的だなとも感じました。

普段から(仕事で)デザインで問題を解決するということをやっているので、課題があれば解決して、もっと良い状況にしていこうって、そういう風に考えることがくせになっているところはあります。

自分の手で何度でも光を取り戻せる ー「光る絵」に込められたもう一つのメッセージ

—— 単に光って面白いだけではなくて、課題解決につながるものだと。

ただ単に目立つからとか、面白いから絵を光らせているわけではなくて、自分なりのコンセプトがあって画材は選んでいます。

以前、お見舞いの絵を依頼されたことがあって。病気で入院している甥っ子のために、絵を送って元気にしてあげたいという切実な内容でした。それで、その男の子と彼が好きなワンちゃんが、一緒に花火を見上げている絵を描きました。

こちらも、蓄光塗料をのせた花火が暗いところでキラキラと光りだす絵です。つらい治療で苦しい時、夜の病院で寂しい思いをしている時に、元気になって花火を見ている自分を想像して欲しいという気持ちから描きました。男の子は絵を手にすると、すぐに笑顔になって、それから暗いところで見て、お母さんに「この絵、光るよー!」と何度も言っては喜んでくれたそうです。

あべせいじさんの作品

蓄光塗料は、光が弱まってきても、部屋の照明や携帯電話の光とかを当ててあげるだけで、また一気にブワって光りだすんです。その元に戻せる仕組みに、“もう一度希望を与えられるんだよ” 、“もう一度輝きを取り戻せるんだよ” と、どんなことがあっても、何度でも立ち上がれるよというメッセージを込めています。

無事その男の子は退院して、後日お便りをもらったんですけど、その絵がきっかけで花火が好きになったこと、退院できたから本物の花火を見に行けるようになったことが書いてあって、涙が出るくらい嬉しかったです。僕の絵と一緒に笑顔で写っている写真を見た時は、本当に感無量でした。

—— 素晴らしいですね!なるほど。光が弱くなってしまっても、自分のアクション次第で光を取り戻してあげることができると。

そうなんです。部屋の電気をつけて、照明の光を当ててあげる。翌朝、朝日が昇ってくるのを待って陽の光を当ててあげる。どんな方法でも、また光り輝くように戻してあげることができるので、また元気になれる、もとに戻れるというメッセージを絵に込めて描いています。

触って、叩いて、上に乗っかって ー 僕はもっと作品で楽しんでもらいたい

—— 素敵なメッセージですね。改めてお話を伺って、デザイン的であったり、インスタレーション的=体験型であったり。あべさんの作品は、ただ見て終わるのではなく、みなが参加できるようになっていて、そこが素晴らしいなと感じました。今後チャレンジしてみたいことはありますか?

絵でも立体作品でも、大きなものを作ってみたいですね。

—— 大きなものですか?

例えば「光る絵」であれば、もっと大きな絵にしたら皆で光を当てることもできるなって。あと、部屋全体に光る絵を描いて、明るいときでも暗いときでも、どちらでも楽しめる空間作品を作ったら面白そうだなって。

立体作品であれば、小さな子どもが上に乗っても大丈夫なサイズのものを作りたいですね。あ、大人が乗っても大丈夫なサイズなら、尚いいですね(笑)。

—— 乗ったり、触って遊んだりできる作品を作ってみたいと?

今は生活に密着したアートをテーマにしていることから、手頃なサイズ感の立体作品を作ることが多いのですが、小さい作品だと、見に来てくれた子どもたちが触ろうとしたときに、お母さん方から「それ触っちゃだめよ!」「壊さないでよ!」って注意されちゃうことがあって。お母さん的には作り手のことを考えて言ってくれているので、ありがたい気持ちもありつつ、僕的にはちょっとくらいなら触っても大丈夫だよって思っていて(笑)。

なので、そういうのを全く気にしなくていいような、大人が上に登ってもびくともしない作品を作って、みんなで楽しめたらいいなって思っています。

あべせいじさん3

—— 手で触れたり、上に乗っかれたり。観る人も何かしら参加できる作品に、魅力を感じられているんですね。

そうですね。一般的にアート作品=触らないで静かに鑑賞するものっていう認識があると思うんですが、僕は作品でもっと楽しんでもらいたいっていう気持ちが強いんです。

形が特徴的だったり、色がキレイだったり、質感が不思議だったり、そんなものがあったら誰でも触ってみたくなると思うんです。なので、触るとか、そういうのを全部OKにした作品を作りたいなと。バシバシ強く叩いてもOK!、上にまたがってもOK!っていう、そんな作品があったら面白いですよね。

—— いいですね!そこに何かあれば、人間だもの、触ってみたくなっちゃいますよね(笑)。

絶対そうだと思いますよ。街中にある面白い彫刻とか、皆さんすごく触っているじゃないですか。そういう作品って、なんかいいなって思っていて。年数が経つうちに、ゾウの鼻部分がだんだん細くなっていくとか、おしりはどんどん丸くなっていくとか(笑)。そういう風に変化していく作品って素敵だなぁって思うんです。

—— 積極的に触ることを良しとしてくれる作品って、なんだか気持ちがいいですね。ぜひ取り組んでいただきたいです!

ありがとうございます。「光る絵」は引き続きやっていきますし、今お話したような触れる作品、触った人たちが優しい気持ちになれるような作品にも、これから挑戦していきたいです。ただ、今後どんな作品を作ろうとも、「LOVE & PEACE」のメッセージはずっと変わらず伝えていきたいですね。

—— 作品と同様に、心温まる素敵なお話をありがとうございました。「光る絵」、「触れる作品」などなど、今後のチャレンジも楽しみにしています!本日はありがとうございました!

文:mecelo編集部 / 写真:林 直幸

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