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自分が心から楽しめることで、生きていることを面白がりたい ー それこそが私の“生きる目的”【後編】

ご自身の掲げた “人生の目的” 達成のため、試行錯誤を繰り返し、ひたむきに進んでいく いわいあいみさん。後編では、ご自身でも強いと感じている “こだわり” と、それによって生じる “モヤモヤ”、そしてご自身なりの折り合いの付け方についてをお話しいただきます。

こだわりのせいで素直にできなかった駆け出し時代

—— そもそも「自分の楽しみ」か「相手の喜び」かで悩むことになったきっかけは、何だったのでしょう?

当時は、「自分が楽しいこと」と「相手が喜ぶこと」の順位を決めきれなかったことに、すごく悩んでいました。自分と相手と、私の中ではどっちが上なんだろう?どっちが一番なんだろう?って。

会社に所属していた頃は、「相手が喜ぶこと」が私にとっての一番の原動力だと思っていました。私がお客様のためにとった行動は、分かりやすく評価にもつながったし、私の自信にもつながっていましたから。

でも、独立して、イラストの仕事をするようになってからは、「相手が喜ぶこと」だけを目的に行動することができなくなっていることに気づいたんです。

—— 会社で働くこととフリーランスとでは、なにか決定的な違いがあったのでしょうか?

飲食店で働いていたときは、そもそもの職場選びからすごくこだわっていました。当時は、オーガニックやマクロビオティックにすごくハマっていたので、そういった料理や商品を提供していて、かつ自分でも通いたくなるようなお店を選んでいました。なので、販促ポップや黒板を描く際も、本当に好きなもの、自らおすすめできるものを描いていたので、すごく納得感があったんです。

でもフリーランスの人は、自分が納得しきれない仕事でも、自分の責任で対応していかなければなりません。でも駆け出しの頃は、納得しきれない仕事をいただいたときに、自分の中でどうやって折り合いをつけたらいいのか、その対応が本当に下手だったんですね。自分でも、自分のこだわりの強さのせいだと分かっていた分、すごくモヤモヤしていました。

—— どんなこだわりがあったのでしょう?

ここでもディズニーの影響が大きくて(笑)。

仕事では、納得感のあるゴールや目的を定めて、それに向けて今これをやっているという、一本筋の通ったやり方が好きで。なので、目的そのものに対して納得しきれなかったり、そもそも目的がはっきりしていなかったり、目的達成のための方法に疑問を持ってしまったりすると、素直な気持ちで進めることができなかったんです。もちろんお仕事ですから、「なんでだろう?」と思いながらも、きちんとこなしてはきました。

でも苦しかったのが、せっかくお仕事をさせていただいたのに、それを私が心から誇れなかったこと。自分のホームページで、最近こんなお仕事しました!って、胸を張って言えなかったことです。

—— 胸を張って言えなかったのは、どんな想いがあったからですか?

自分がこの仕事を担当しました!って、大々的に言ってしまったら、私自身がその商品やサービス、あるいは会社の考え方を全面的におすすめしていることとイコールになるのかなって思ったら、すごく悩んでしまって。

今はさすがに、もう少し柔軟に対応できるようになりました。でも当時は、自分の中で上手く対処できなかったんですね。

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経験を重ねることで、つかめた“心の余裕”

—— そこから、どのようにして対処できるように変わったのでしょう?

一番は、疑問を感じたらそのままにしないで、疑問点についてクライアントさんと丁寧にやり取りをして、モヤモヤするような仕事を減らしていったことでしょうか。

あとは、経験を重ねていくうちに、なんとなくですが、自分に合った仕事は残っていくし、楽しみながらできた仕事は続いていく、そうではなかったものは自然に離れていく... そういうことが分かってきたことも大きいかなと。

すごく無理をしなくても大丈夫なのかもしれないって。余裕といえる程のものではないんですが、前よりは落ち着いてものごとを対処できるようになったと思いますね。

—— 経験を重ねていくうちに、自分に合ったペースが分かってきたということ?

そうですね。駆け出しの頃は、今よりも大量に絵を描いてました。でも描いていたものは、ほとんどが自分の描きたいものではなくて、仕事を獲得するために必要な絵で。

今世の中で売れているものは何なのか、ウケているものは何なのか。そういった商品やサービスで扱ってもらうためには、どんな絵を描けばいいのか。とにかく数年間は、仕事を獲得する、知名度を上げることを目的にひたすら絵を描いていました。

そうやって機械的に描いていくうちに、自分はいったい何を感じて、何のために絵を描いているのか、心の中にあった芯のようなものがどんどん抜け落ちていってしまった感覚があって。でも当時は、仕事と知名度という目的のために、自分の中がバラバラになろうとも、それでもひたすらに描き続けました。

—— 最近は、当時のようにがむしゃらにならなくてもいいようになったんですね。

はい。最近は、今自分は何を感じているのか、どんな気分なのか、そういった小さな気づきをきちんと感じ取れるようになってきました。あの怒涛の数年間で抜け落ちてしまった心の芯みたいなものも、また戻ってきたような気がします。

今は、“自分が好きな絵を描くこと” と “仕事で絵を描くこと” とを、上手く取り混ぜてやっていくイメージが見えてきている感じですね。

いわいあいみさんの作品

転々としながらも、心はひとつの目的地を求めていた

—— “好きな絵を仕事にする”ということに、自分なりの落とし所を見つけられたんですね。

はい。でもここまで来るのに、さっきの心の芯が抜け落ちるじゃないですけど、いろんなことがありました(笑)。

—— どんなことがあったんですか?

フリーランスになってから、たぶん3回くらいは画材を捨ててます(笑)。

—— え!? 画材を捨てたんですか? 商売道具なのに?

はい(笑)。

—— なぜまたそんなことを?

「イラストレーターを辞める!」って、自分に宣言するためです。

—— え!? なぜ、辞めようと思ったんですか?

辞めたくなるときって、きっかけがあって。掛け持ちのアルバイトでやたら成果を出したり、評価されたりしたときに、辞める!ってなっていましたね。

私は、働くこと自体好きですし、人とコミュニケーションすることも好きなので、自分で言うのもなんですが、頑張るとけっこう成果を出せるタイプなんです。なので、掛け持ちの仕事の方で上手くやり過ぎちゃうと、「私には、絵よりこっちの仕事の方が合ってるのかも」なんて、けっこう真剣に考えちゃうんです(笑)。

—— 上手くいってるほうに、気持ちが流されるというか(笑)。

はい。あとは、当たり前ですが、イラストレーターってひとり作業が多くて。でも私は、人とコミュニケーションしまくりたい人なので、ひとりぼっちではつまらないというか、チームで仕事がしたい!って、そういう欲求が出てきてしまうんです...。本当に、ただのわがままなんですけど(笑)。

で、チームで働けて、たくさんの人とコミュニケーションできる仕事って何だろう?って、ムダに考えはじめたら、会社に勤めるとか、お店で働くとかってなって(笑)。

—— フリーランスになってから、会社勤めに戻ったことはあったんですか?

完全に会社員に戻ることはなかったです。イラストを描いていくために、接客だったり、デザイン系会社のディレクターだったり、塗装とか肉体労働系の仕事だったり、いろいろやってはいましたけど。

傍から見れば、短期の仕事とか、いろんな仕事を転々としてるように思われがちですなんが、私の行動には変わらない理由があって、自分の中では筋の通った選択をしてきたと思っています。私の人生の目的が、 “自分が「生きてる」って実感できる” ことなので、それを叶えられる場所を手探りながら探していたんです。

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絵や画材は、私と人をつなげてくれるもの

—— 画材を捨ててしまったことも、筋の通った選択だったということでしょうか?

はい。私の中ではそうです。

よく人生を航海に例えてイメージするんですが、はるか彼方にある島が人生の目的地で、そこに向かうために乗る船が仕事だとしたら、フリーランスの私が乗っているのは、本当に小さな小舟。小さい舟なので、自分で漕ぎます(笑)。その逆で、会社はたくさんの人が乗れる大きな船。同じ目的地を目指している人たちが、協力して船を動かしています。

自分ひとりで漕いでいると、たまに「やっぱりこのままではたどり着けないんじゃないか。でもどうしてもたどり着きたい!どうすればいいんだ?」て悩むときがあって。そうすると、同じ目的地に向かっていそうな船を探しては、その仲間に入って、“会社に就職する” や “他の仕事をする” という選択を選びます。

他の船に乗り込む際、画材というもともとの自分の荷物は、重荷になってしまうから「えいやっ!」で捨てていくんです。ちょっと迷っているときでも捨てちゃいます(笑)。もう船を乗り換えるしか道はない!逃げ道は断つ!みたいな感じです。

—— でも、結局は小舟に戻ってきたわけですね(笑)。

また画材を捨てたくなったときは連絡して!って、友だちからは言われてます(笑)。どうせ捨てても、またそのうち買い集めることになるんだから、お金の無駄だって。まったくその通りだと思います(笑)。

—— たしかに(笑)。でも、なぜ戻ってきてしまうのでしょう?

同じ目的地に向かって進んでいたと思っていたけど、実際には違ったという理由で戻ってくることがほとんどです。こういうことをすでに3回は繰り返していて、ようやく“もう小舟で行くしかないんだよ” って、自分で覚悟を決めた感じです(笑)

あとは、私にとって絵や画材は、単なる道具というよりは、“私と人を引き合わせてくれる” 相棒というか、仲間みたいなものだということに気づいたことも大きいです。

—— 絵や画材は相棒!

そうです。SNSなどで拡散されていった私の絵が、私とは全く別の存在となって、私の知らないところで知らない人に何かしらの感動を届けていて。そして、その人たちと私とをいつか相棒が引き合わせてくれるんです。特に絵はそういう存在だと感じています。

なので、私は描いた絵を後生大事に仕舞っておこうとは思わないし、もし絵が失くなってしまったとしても、それはもう私ではないものだから、彼らの好きなところへ行っていいんだよっていう(笑)。たくさんの人に共有され、共感された絵であればあるほど、もうすでに私のもの、私の一部ではないものという感覚が強くなりますね。

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人と関わることで、生きる面白さを感じていたい

—— 今後は、どのような活動をしていきたいですか?

いただくお仕事とは別に、自分から提案できるお仕事もしたい、かつ人とコミュニケーションもできる仕事もしたいということで、最近はじめたのがオンライン販売の似顔絵です。

アイコンのように正面を向いている顔だけじゃなくて、動きも取り入れたいと思っているんです。似顔絵なんだけど、踊っていたり、走っていたり。会話のシーンや、何かを取ろうと手を伸ばしている場面。日常のちょっとした瞬間。

そういう何気ない一瞬のしぐさに、その人らしさが一番表れてくると思っていて。動きを取り入れることで、その人らしさや今しかない瞬間というものを表現したいなと。いろんな方の人生の瞬間に、描くことで関わっていきたいなと、今は思っています。

—— やはり一貫して、人と関わっていくことはいわいさんの“人生の目的”なんですね。

そうですね(笑)。“私がいいと思うもの” の究極って、やっぱり「生きてるって面白い!世界って面白いな!って感じてる瞬間」なんだと、最近そう思うんですよね。

それを一番感じることができるのが、“人との関わり” そして “コミュニケーション”なんです。そこから感じられるものを、絵として表現していきたいですね。

—— ご自身の掲げた “人生の目的” 達成に向かって、ときに揺らぎながらも、前へ前へとひたむきに進んでいく いわいさん。場を楽しませることが得意な、おおらかな彼女の中にある強さを感じたインタビューでした。本日はありがとうございました!

文:mecelo編集部 / 写真:林 直幸

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