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夫との出会いから生まれた「ポジティブな欲望」が私の画家人生を180° 変えてくれた【前編】

不思議なモチーフを色鮮やかに瑞々しく描く、画家の雨あかりさん。インタビュー前編では、少年法に強い関心を寄せていたという雨さんが、なぜ美大への進学を決めたのか、そしてどんなコンセプトで制作しているのかについてお話しいただきました。

一生続けられそうだと思い、進路変更して美大へ

—— いつ頃から、どんなきっかけで絵を描くようになったんですか?

そもそものきっかけは、授業中に描いていたノートの落書きでした。

中学の頃、眠くなったらよくルーズリーフに落書きしていたんです(笑)。漫画とか先生の似顔絵とか、楽しいと思ったものを何でも描いてました。そしたら、段々と描くことが楽しくなっていったんです。

オリジナルキャラを通じて他クラスの子とも仲良くなったり、友人らとリレー漫画をしたり、今風に言えば、描くことをコミュニケーションツールとしても活用していたかなと。とにかく絵を描いては、みんなでワイワイするのが楽しかった記憶があります。

—— 描くことに目覚めてからは、絵の勉強に力を入れていったのでしょうか?

高校生のときは、少年法に関する分野に強い関心を持っていて、法学部に進みたいと考えていたので、生活のメインはもっぱら勉強で、絵を描くことはそんなに無かったですね。

なぜ少年法に関心を持っていたのかと言うと、「なんで凶悪犯罪でも、少年法だけそんなに甘いんだ!」と憤る事が多々ありまして。子どもからお年寄りまでが、安全に暮らせる社会を作りたいなと思っていたからなんです。

でも最終的に、私の力だけで世の中を変えることは不可能だし、やっぱりモノをつくる方が一生続けていけそうだなと思い直して、美大に進路を変更しました。

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—— 美大へ進むと決めたときは、将来は作家になろうと考えていたんですか?

当初は、お金を稼ぐためにもデザイナーになろうと考えていました。なので、美大ではデザイン系の学部を選んだのですが、自分には合っていませんでしたね。全然おもしろくなくて(笑)。

—— どんな点が、雨さんに合わなかったのでしょう?

デザイン的な思考が全くできなかったんですよね。そこの領域では頭が働きませんでした。

合わないと思いながらも、卒業後はデザイナーとして一度は就職しました。ですが、やっぱりよくわかりませんでしたね。それでデザイナーを辞めて、現在は結婚して在宅仕事をしながら絵を描いています。

デザイナー時代に先輩らから学んだ「先輩らより20分前に出社し、掃除をして待つこと」「どんなにしんどくても納期と出社時刻は守ること」などの教えは、今こうして、画家として人と関わる上でとても活きていますね。本当にありがたいです。

雨あかりさんの作品

Works1

夫との出会いから生まれた「ポジティブな欲望」

—— 瑞々しい色彩が印象的ですが、現在の作風はいつ頃から描くようになったんですか?

3年ほど前に夫と出会ったんですが、夫と知り合ってから私の性格が一気に明るくなったんです。そこからですね。

美大へ進んでからは、進路への後悔だったり、勉強や責任から逃げた事による自責の念、周りへの苛立ちなどから、だいたいいつも落ち込んでるかブチ切れてるかで、とても歪んだ人間でした。

絵も黒い鉛筆とか黒色の画材ばかりをつかって、暗くドロドロした感じのものばかりを描いてましたね。それが夫と出会って一変、今のような明るいカラフルな作風になって、以降はずっとこのスタイルです。

—— 旦那さまとの出会いによって大きく変わったとのことですが、なぜそこまで変わることができたのでしょう?

夫が、私のゆがんだ考え方を全部正してくれたんです(笑)。

それまではひねくれたり、プッツンしたり、極端な方向に考えが走っちゃうようなタイプだったんですけど、そういった考え方をひとつひとつ丁寧に、根気強く「なぜダメなのか?」を真摯に説明してくれまして。

そのおかげで、性格からも作品からも「ゆがみ」がなくなりました。

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—— 旦那さま、すごいですね!旦那さまとのコミュニケーションを通して、作風がどんどん変わっていったんですね。

かなり変わりました。

現在は「ポジティブな欲望」をテーマに描いているんですが、それ以前は怒りであったり、世間に対する恨みつらみであったり、そういったネガティブな感情をぶつけることがテーマになっていました。

—— そのような心境になってしまった理由があったんですか?

中高の頃は何をしてても全てが楽しくて、毎日充実していました。でも進路変更して美大へ入学すると、大学の空気が肌に合わなくて、気持ちの安定しない日々が続きました。

無理くりな褒め合いとかめんどくさい! 何で真面目にやってる人の邪魔をするんだろ? 何でわざわざ嫌いな人に近寄って陰口言ってんの? みたいな(笑)。あと授業のカリキュラムも「みんなで仲良くあそびましょうね」みたいなのがちょいちょいあって、イラっとしてましたね。まあ進路変更して、勉強から逃げた自分の自業自得でもあるのですが...。

当時は、こういった気持ちがそのままダイレクトに作品に表れていたんですよね、すごく暗い絵ばかり描いてました。

でも夫と出会ったことで、ネガティブな感情を発散するだけではない表現というものができるように変わっていったんです。

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「ポジティブな欲望」とは、相手を傷つけない “わがまま”

—— 現在のテーマである「ポジティブな欲望」とは、どういった欲望なのでしょうか?

欲望には、ポジティブなものとネガティブなものがあると思っていて。例えば、珍獣を飼ってみたいだとか、美味しいものを食べたいだとか、新しく発売された◯◯が欲しいだとか、こういった欲望はポジティブな欲望です。逆に、あいつを蹴落としたいとか、あの人を奪いたいとか、こういうのはネガティブな欲望。

ポジティブな欲望は、他人を傷つけることなく自分の理想を叶える “わがまま” の一種だと考えいて。せっかく生まれてきたわけだし、ちょっとぐらいわがまま言ったっていいじゃない!みたいな気持ちから「ポジティブな欲望」をテーマに制作してます。

高校時代までの「自分のわがままを通さずに、社会のために生きたい」という考えとは真逆になってしまったので、良いのか悪いのか…。でも、生まれて初めて好きな人ができて、この人にわがまま言ったり甘えたりしたいな!って、ポジティブな欲望が芽生えたんですかね。

—— 作品には、雨さんの “わがまま” が詰まっているんですね。

そうですね(笑)。

大学時代からは、ネガティブな欲望ばっかりだったんですけど。クラスメイトを蹴落としたい!とか、大嫌いな教授を見返してやりたい!とか。今はそういったものは、全く描かなくなりましたね。

—— 今はもう、ネガティブな欲望を描きたくなることはないんですか?

一切ないです。

—— ちなみに、どのくらいの期間で考え方が変わったのでしょう?

出会ってから一ヶ月くらいで、ガラリと変わったと思います。

—— たった一ヶ月ですか!?めちゃくちゃ早いですね。

夫はすごく頭のいい人なんですよ。話すときは自分の意見を押し付けるのではなく、私が納得できるように話してくれるんです。なので、話を聞いていてムカつくこととか全然なくて、逆に「ああ、なるほど!」って気付かされることのほうが多いですね。

あまり詳しく書くと本人に怒られるので言いませんが、本当にものすごく人に対して真面目に向き合ってくれる方なんですよ。

—— 旦那さま、すごいですね!

私もびっくりしましたね。世の中にはこんな人がいるんだ!って(笑)。

—— たった一ヶ月で、性格も作風もガラッと変わってしまうと、自分でもびっくりしませんでしたか?

すごいびっくりしました。え!おぉ!?みたいな感じだったと思います(笑)。

出会った当時は24歳だったんですけど、24年間生きてきて、こんな短期間に価値観が一気にガラッと変わることなんて無かったので、本当にびっくりでしたね。

基本、誰かと出会って話したり、どこかへ旅したくらいでは、そこまで価値観が変わる…みたいなタイプでもないので。

文:mecelo編集部 / 撮影:photondo 安藤博美 / 画像調整:雨あかり

後編では、雨さんの作品づくりへの姿勢やこだわり、そして今後のチャレンジについてお話しいただきます。

雨あかりさんインタビュー 後編はこちら

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