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自分なりの芯をもって、ずっと続けて欲しい ー 自らコミュニティを運営する写真家が想うこと【後編】

実業家、フォトグラファー、コミュニティ運営者と、複数の顔をもつHaru Wagnusさん。後編では、写真を趣味から仕事へと発展させるきっかけとなった、ハイブランドからの突然のオファー、実業家マインドの秘密、そして運営されているコミュニティについてお話いただきます!

趣味の写真家に届いた、突然のビッグ・オファー

—— 全くの初心者からSNSで写真投稿を始めて、今では10万名以上のフォロワーがいらっしゃいます。見てくれている人が増えたことで、写真への取り組み方は変わりましたか?

音楽を仕事にした時点で、趣味を仕事にしたら、それはそれでつまらなくなる部分が出てくることはよく分かっていたので、写真は趣味でやろうと、ずっと割り切ってやっていました。

でも2年半ほど前に、WWDというファッション誌を介して、カルティエさんからオファーメールが届いたんです。広告用の写真を僕に撮って欲しいと。どういうことやねん!って思いましたね(笑)。趣味で写真を撮っていただけなのに、こんなことになるのかって。本当にびっくりしました。

ただ、これをきっかけに、仕事として写真を撮っていくのも有りかもしれないって考えるようになりました。ファッション系の仕事がしたいと思うのも、この最初の仕事がファッション系だったから、自分の作風はファッション写真にマッチするんじゃないかって、思っているところがあるからです。

—— カルティエさんのお仕事では、Haru Wagnusさんのカラーを全面に出してくださいという依頼だったんですか?

はい、そうでした。僕の作るものをとても尊重してくれました。実際にどう撮るのか、アート・ディレクションの会議にも参加して、意見も言って。

商品のネックレスの石がマザー・オブ・パールというもので、そのテーマカラーがホワイトだったので、海をバックに、テーマカラーを活かしてモデルさんの服や小物はホワイトカラーで統一して撮影しました。僕からの提案はかなり反映してくれました。

—— 初めてのお仕事で、アートディレクターもフォトグラファーも兼ねられたんですね。

そうですね。カルティエさんからは、9枚つづりの作品を作りたいというリクエストをいただいていたので、テーマに合わせたストーリーも考え、モデルの女優さんに演じていただきました。そのストーリーも撮影の流れも、初めてだったんですけど、全部自分で考えたものでした。

—— 当時の Haru Wagnusさんには、受賞歴や仕事の実績はなかったと思いますが、そういったもの以上に「この人は何を作れるのか」が採用されたポイントであったと?

おそらくそうだと思います。どんな写真を撮っているのか、どんな写真を撮れるやつなのか、そこに注目してくれたんだと思っています。

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レベルの高いものづくり現場が、写真への姿勢を変えてくれた

—— 最初のお仕事を振り返ってみて、いかがですか?

もちろん緊張はしましたけど、始まっちゃったらもう撮るしかないなって(笑)。撮影のアシスタントとして、友人で今やインスタグラマーとして活躍している子がいるんですけど、その子が付いてくれていたので、ちょっと気持ちが楽になりましたね。撮影に入れば、いつも通りにできましたし、振り返ってみても良い撮影ができたなと思っています。

—— ご自身としても満足度は高い?

はい。ただ、僕一人でやったというよりは、現場を担当されたヘアメイクさんとスタイリストさんの存在は大きかったです。僕だけでは気づかないような、ちょっとした服の乱れをサッと直してくれたり、髪の毛をこちらに流してみてはどうか?と提案してくれたり。良い結果に向かって最高の仕事をする、そんなチームで取り組めたのが良かったと思っています。

—— そのお仕事をきっかけに、ファッション系のお仕事もくるように?

多くはないですが、ちょこちょこいただくようにはなりました。ただ待っているだけでなく、自分からモデル事務所にコラボレーションしませんか?って、提案しに行くようにもなりましたし。それまで、そういう営業活動的なことは全くしてこなかったのですが、カルティエさんの仕事以来、自分からも動いて行こうって気持ちに変わりましたね。

—— そんな変化があったんですね。そんな風に変化をもたらしてくれたカルティエさんの仕事は、どんなところが良かったのでしょう?

良い結果のために、最高の仕事をする人たちと取り組めたことが大きかったと思います。そういったレベルの高いものづくりをやらせてもらえたことが嬉しかったし、楽しかったんだと思います。

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自分で自分なりの旗を揚げるんだ!僕にはその選択しかなかった

—— もうひとつの事業、腕時計ブランドについて教えてください。なぜ始められたのでしょう?

音楽とは全く別の事業をやりたいと思ったことが始まりで、事業内容が腕時計になったのは写真がきっかけです。

—— と言いますと?

ファッション・シュートをやっていきたいってところにも繋がるんですが、アパレルと写真を絡めた仕事がしたいなとずっと考えていました。

あと、フォトグラファー仲間たちと何かクリエイティブに特化したことをやっていきたいという思いもあって、このブランドをきっかけにして、例えば写真の仕事に繋がったり、コミュニティとしての機能をもたせることができたら素敵だなと思っています。

実際、これをキッカケに星野リゾートさんやホテルニューオータニ幕張さん、スープマガジンさん等とお仕事をさせていただくことになりました。

—— 音楽もそうですが、好きなことを仕事に変えられるセンス、起業センスをお持ちの方なんだなと感じました。

祖母が自身で会社を経営していたので、いつも口ぐせのように「男は30になったら、一旗揚げろ!」って言っていて。その影響か、自分が経営者になる以外の道はあまり考えていなかったですね。「誰かからサラリーをもらうんじゃなくて、自分で自分なりの旗を揚げるんだ!」って。そんな風に、プレッシャーを与えられながら育ってきたんです(笑)。

—— 起業は、しなければならなかったんですね。それにしても、音楽といい、写真といい、やるぞ!ってなったときの熱量がすごいですね!

本当に楽しんでやっていることが大半なので、大変なことも面白いなって思いながらやれています。ただ、嫁さんはそれに付き合わされて、ヒイヒイ言ってます(笑)。嫁さんには、いつもとても感謝しています。

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コミュニティの風通しを良くしたくて始めた「HUEART」

—— Haru Wagnusさんが運営されている「HUEART(ヒュエルト)」とは、どういったものなのでしょうか?

HUEART(ヒュエルト)は、2年ほど前に写真仲間の(@tak_tag、@iro_dori_)と作ったInstagram内のフォトグラファーのためのポータル・フィーチャーアカウントです。良い写真を撮っている人を紹介したり、写真を通して地域それぞれの良さを紹介したりすることで、フォトグラファー・コミュニティを盛り上げようと始めたものです。

最近では、JTBさんとコラボして、富山県にスポットを当てて、富山の冬の素晴らしさ、地域の良さを伝えるプロジェクトを行いました。HUEARTでは、今後もいろんな地域と繋がって、写真ならではの面白い活動を行っていきたいと考えています。

—— フォトグラファーさん同士のつながりを強めていきたいと。

Instagram内のフォトグラファー同士って、けっこう仲がいいんですよ。家族ぐるみで仲良くしてる人もいます。仲がいいのは良いことですが、昔からの人たちの環が濃くなればなるほど、逆に新しい人たちが入って来づらくなってしまう。コミュニティが濃い分、下からの押し上げが難しくなってしまっている状態で。

そうではなく、新しい人たちも入って来やすい、もっと風通しのいい場所を作りたいと思って、HUEARTを立ち上げました。若い人たちにもどんどん参加してもらって、ゆくゆくはHUEARTから仕事につなげていけたらと思いながら運営しています。

—— つながりだけでなく、仕事を通して成長できる場にしたいと。

撮影会を開催して、リアルな場で交流したり、若い人たちを育てたりとか。こういった機会を通して発掘したフォトグラファーもたくさんいるので、運営は大変ですが、やってみてよかったなと思っています。

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ただ流行っているからではなく、自分なりの芯をもって撮り続けて欲しい

—— 若手の教育やフォトグラファーの底上げにつながるような活動をしようと思ったきっかけは?

教育とか、そんな大それたことをやっている意識は全くないですよ。

企業が参入し始めると衰退スピードが速まるというのは、これまでの歴史が物語っているSNSの性質で。お金を持っている企業が、流行っているからという理由でSNSに参入して、けっこうな予算を投じた割には、思っていたような結果がでないと言ってすぐに撤退していく。大きなお金を使って場だけ荒らして、サッとどこかへ行ってしまう。

悲しいですが、こういった事態を避けることはできません。SNSに参加しているフォトグラファーたちには、そういった危機感を持ってもらい、環境に振り回されないように、自分なりの芯を持って写真に取り組んで欲しいと思っていて。HUEARTは、そうした想いから始めた活動でもあります。

写真で食べていきたい人にとっては、仕事につながるチャンスが転がっている場になれたらいいし、単純に楽しく写真を続けていきたい人にとっては、楽しい場になれたらいい。HUEARTはそんな場所になりたいと思っています。

—— なるほど。SNS等の場に依存することなく、本当にやりたいことをやって欲しいと。

SNSに限ったことではありません。例えば、使っていたサービスが終了してしまったら、写真を撮ることも止めてしまうかもしれない。それはつまらないなって。せっかく写真を始めたんだったら、死ぬまで続けてもらいたい。僕も、おじいちゃんになっても撮り続けていたいって思ってますし。

ただ流行っているからやるのではなく、自分なりの芯を持って、自分らしい写真が撮れるフォトグラファーになって欲しい。HUEARTの活動を通じて、そんな人たちがいっぱい出てきたらいいなと思いますね。

—— 素晴らしい活動ですね!

自分たちのいる場所を守りたいがためにやっているんだと思います。

—— フォトグラファーに限らず、今後どんな風に生きていきたいと考えていますか?

今年に限っていえば、旅行をして、世界を見てきたいですね。視野を広げたいです。あとは、のんびりするときはゆっくりして、自分の表現をするときにはしっかりとやって、楽しく生きていきたいです。これが一番ですよ。

—— 調査力とフットワークの軽さ、そして実業家精神で、好きなことをビジネスに発展させてきた Haru Wagnus さん。これから、どんな新しいコラボレーションを生みだされていくのか、とても楽しみですね。本日はありがとうございました!

文:mecelo編集部 / 写真:林 直幸

Haru Wagnusさんインタビュー 前編はこちら

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フォトグラファー、クリエイター