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自身に影響を与えてくれた作家たちのように、“楽しい時間” を提供できる人になりたい【前編】

細かく切り分けたパーツを重ねて貼り合わせるという独特の手法で、女の子をモチーフに表現活動をされている 林 ホノカさん。そんな林さんに、会社員を辞めて作家になった経緯や独特の制作方法へのこだわりについてお話しいただきました。

おもちゃのデザイナーを経て、念願のイラストレーターへ

—— いつ頃から絵を描いているんですか?

小さい頃から絵を描くことが好きで、よく絵本や童話にでてくる絵を真似して描いては、自分が読んだ本の「図録画集」を作ったりするような子どもでした。

現在のような「作品」を制作し始めたのはごく最近ですが、大学在学中から、写真作品や空間をつかったインスタレーション作品などのメディア・アート、デジタル作品などをよく制作していました。また、商業用のイラスト制作の仕事も個人で請け負っていました。

—— 大学では、アート系の学部を専攻されていたんですか?

いいえ。情報メディアという、デジタル表現について勉強する学部でした。学校の授業では、パソコンを用いての制作ばかりだったので、現在のようなアナログのイラスト表現については独学です。

—— 在学中にイラスト制作の仕事もされていたそうですが、当時はイラストレーターを志望されていたんですか?

はい。昔から、自宅で仕事をすることに憧れていまして。でも当然、作家では食べていけないだろうと思っていたので、現実的に考えて、商業系のイラストを描くイラストレーターになりたいと考えていました。

—— 大学卒業後は就職して、おもちゃのデザイナーをされていました。なぜ、そのままイラストレーターを目指さなかったのでしょう?

在学中に請け負っていたイラスト制作の仕事は、学業と両立していたこともあり、それだけで食べていけるほどの量のお仕事は受けていなかったんですね。

また自分の中で、イラストレーターとして本格的に働きだす前に、一度は会社に就職して、一般的なビジネスのスキルであったり、幅広い表現技術を習得したりしてからのほうがよいのではないかと考えていました。

とはいえ、最終的には、昔から好きだった子ども向けの雑貨やおもちゃの企画・デザインをしてみたいという純粋な気持ちから、おもちゃの企画会社に就職しました。とくに雑貨のデザイナーは、小学校の頃から憧れていた仕事のひとつでしたから。

—— それから念願のイラストレーターへと転身されますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

おもちゃのデザインの仕事では、よく作家さんやイラストレーターさんの絵をつかってデザインすることが多かったのですが、仕事をしていくうちに「自分の絵をつかって、おもちゃや雑貨のデザインができたら楽しいだろうな」と考えるようになっていったんです。

もともとイラストレーターになりたいと思っていたこともあって、そこから本格的にイラストレーターを目指すことにしました。

02

イラストレーターよりも、作家が向いてると言われて...

—— イラストレーターになると決められてから、どのようなことをされたんですか?

イラストレーターになる方法をいろいろと調べてみたところ、どうやらイラスト教室やイラスト塾というところに通って、表現を学んだり、仕事の機会を掴んだりするらしいことを知りました。でもほとんどの教室は東京で開催されていて、当時 関西で働いていた私には通うのが難しかしいものばかりでした。

あきらめかけた頃に、イラストレーターの中村佑介さんが大阪でイラスト教室を開催するという情報を聞きつけました。「私には、もうこれしかない!」って、すがるような想いで、熱烈なメールを送って参加申し込みしました。いま思い返してみても恥ずかしい “熱烈な” メールのおかげか、無事に中村先生のイラスト教室に参加することができました。

—— そちらのイラスト教室を経て、現在の制作スタイルが生まれたんですか?

そうですね。もともとはパソコンをつかって作品制作をしていたのですが、中村先生に作品を見ていただいたときに「アナログに紙を切り貼りして作ってみたらどうかな?」とアドバイスをいただいたんです。

そのとおりに試してやってみたら、けっこう楽しくて。なのでそれ以降は、現在のアナログな手法で作品制作をするようになりました。

—— 当初から、わりと “作品づくり” を意識した制作をされていたんですか?

教室に参加した目的は、商業イラストレーターになることだったんですけど、私の作品を見てくださった中村先生から「君はイラストレーターより、作家になるほうが向いてるかもしれない」と言われまして。

尊敬する、すごい先生からのひと言だったので、思わず「はい!では、そうします!」って(笑)。思えば、中村先生のそのひと言から、「作家」を意識するようになった気がしています。

—— 林さんのどんなところが、作家に向いていたのでしょう?

イラスト教室の課題で「絵本の表紙をイメージして描く」というものがあったんですが、私はそのときに『人魚姫』を題材に選びました。

そのとき、中村先生がおっしゃったことで印象的だったのが、「興味のあるものより、興味のないものを選んで描くほうがいい」「苦手なものこそ、仕事で頼まれやすいから、興味のないものも描けるようになった方がいい」ということ。

課題では、でき上がった作品だけでなく、そもそも何をテーマに選んでくるのか、そういった選択や行動も見られていて、おそらく、「この子は自分の好きなものを自由に描くほうが合っているタイプ」だと思われたのかもしれません。

—— 現在の制作スタイルも、作家活動をされていることも、中村先生との出会いが大きく影響していたんですね。

はい。中村先生との出会いがなければ、今のこの作品は作っていなかったと思います。

林ホノカさんの作品

切って、重ねて、貼り合わせることで生まれた “面白み”

—— イラスト教室に参加して、本格的に作家活動を始められたのはいつ頃からですか?

昨年(2017年)の6月に初めて個展を開催して、それから作品発表をするようになりました。個展の少し前に、おもちゃのデザイナー職は退職して、今は制作時間を確保できる程度に働いています。

いざ個展の準備を始めてみたら、時間が全然足りなくて。仕事がある日は2時間くらいしか制作時間を捻出することができなかったんです。

—— 制作時間を確保するためにも、働き方を変えられたんですね。

はい。あと、夜中にひとりで細かいパーツを切り貼りしていると、「こんな誰もやっていないような、すごく面倒な手法で制作していて、本当に意味があるのだろうか」とか「こんなに頑張って作っても、誰も見てくれなかったらどうしよう」とか。体力的にも限界に近い状態だったせいか、とにかくネガティブな気持ちに陥りやすくなってしまっていました。

それで、制作時間を確保するためにも仕事を辞めました。そうしたら、時間に余裕ができたことで気持ちが安定して、制作もすごく捗るようになりました。

—— “こんな誰もやっていないような、すごく面倒な手法” を続けているのは、なぜなのでしょう? 林さん的には、どんな魅力があると感じているんですか?

一番おもしろいと感じるのは、絵に「影」ができることです。切ったパーツ同士を重ねていくと、段差や凹みができて、そこに「影」が生まれます。

影は光の加減や向きによって表情が変わるので、作品を飾る場所、たとえば暗い部屋の中では女の子の顔が恐ろしく見えたり、逆に明るい部屋では微笑んでいるように見えたりします。個人的には、「影」によって、描いた人物の表情をも変化する、多彩になるという点が魅力だと感じています。

あと絵って、基本的にフラットな作品が多いじゃないですか。なので、完全なフラットではない “凹凸のある絵” というのは、他にあまり例がなくて面白いかなと思っています。

03

不安や悩みはあるけれど、今はとにかく作り続けていく

—— 現在の制作スタイルが確立されるまで、けっこう悩まれたりしたんですか?

イラスト教室に通っていたときが、ちょうど悩んでいた時期と重なっていました。先生からも「そんなに悩まなくても大丈夫だよ」って心配されてしまうくらい、作風や制作スタイルのことで悩んでいた時期でしたね。

自分の好きな作風を表現するにはどうしたらよいのか、憧れの作家さんの作るものと自分の作るものとの差をどうしたら埋められるのかとか、本当に毎日のように悩んでいました。

でも悩んでいても進まないので、今はとにかく “つくり続けること” を続けていこうと思っています。

—— 悩む前に、まずは制作し続けようということですね。

もちろん、不安は感じています。

私は自分の作品を商業的にも使ってもらいたいと考えているので、私のつくるこの半立体的な絵は、一般的にどう受け入れられるのか、こういったスタイルの作品でも仕事につなげていくことができるのか、こういった点はすごく気になります。

悩みや心配ごとをあげればキリはありませんが、とりあえずはあと10年、この方法を続けてみようと思っています。

文・写真:mecelo編集部

後編では、林さんの代表的なモチーフとなっている「女の子」について、こだわりやテーマについてお話しいただきます。

林ホノカさんインタビュー 後編はこちら

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Icon林ホノカ

作家、イラストレーター