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自身に影響を与えてくれた作家たちのように、“楽しい時間” を提供できる人になりたい【後編】

細かく切り分けたパーツを重ねて貼り合わせるという独特の手法で、女の子をモチーフに表現活動をされている 林 ホノカさん。後編では、林さんの代表的なモチーフとなっている「女の子」について、こだわりやテーマについてお話しいただきます。

だれがどんな服を着ていたって、いいじゃない

—— 林さんといえば、女の子を描いた作品が印象的ですが、なぜ「女の子」なのでしょう?

中原淳一先生が描く女の子の絵がすごく好きなんです。

中原さんの描く女の子のような絵を、私も描きたいと思っていて、それでモチーフに女の子を選んでいるところはあると思います。

—— いろんな国籍、いろんな人種の女の子を描いていますね。

国籍とか人種とか、そういった「括り」のない世界がいいなと思っているんです。どんな理由にもかかわらず、人を “差別する” ような言葉や考え方が苦手で。

だれがどんな服を着ていたって、何を好きでいたっていいじゃないか、と思っているので、人種に関係なく、身近にいそうだけど、少し変わってると思われていそうな、不思議な雰囲気をもった女の子を描きたいなと思っています。

たとえば、金髪の女の子がチャイナ服を着ていたりとか、あえて違和感を持たれるような組み合わせを描くことで、本当は好きなものを自由に着られることのほうが「普通」なんだというメッセージを伝えていきたいなと。

—— それで、あえて “意外な組み合わせ” を描いているんですね。

そうなんです。なので、作品を見ていただくときも、「これは意外な組み合わせだ」と考えるのではなく、「そういう選択もあっていいよね」って、そういう自由な気持ちで、発見を楽しみながら見てもらえたら嬉しいです。

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いろんな感情をひめた女の子たちを描いていきたい

—— “国籍とか人種とか、そういった「括り」のない世界” については、いつ頃から意識されるようになったんですか?

昔から、差別とか、その手の話を聞くことがとても苦手でした。そういう話を耳にすると「そういう考え方って、どうかと思うよ」って、けっこうはっきりと言ってしまいます。

私自身、昔からよく「あなたは、変わってるよね」って言われることが多かったんですけど、自分の何がどう変わっているのか、ほかと何が違っているのか、自分では全然わからないんですよね。差別が苦手なのは、自分自身の体験が影響しているのかもしれないですね。

—— いろんな服を着た女の子たちを描くことで、世の中には多様な人がいることを伝えたいと。

先ほどのチャイナ服を着た金髪の女の子も、見た目は欧米人のように見えるかもしれないけど、でも実際にはどこに住んでいて、どこの国籍かなんて、見た目からだけではわからないと思うんですね。見た目だけで判断しない、そんな世の中になっていったらいいなと思っています。

あとは、いろんな「人」だけでなく、いろんな「表情」やいろんな「性格」も表現していきたいなと思っています。

—— いろんな「表情」ですか?

はい。こちらも中原淳一先生の影響が大きいのですが、彼の描く女の子たちって、表情がとても豊かで、かつ繊細なんです。もの悲しい表情、片思い中の相手を思う表情、強い意思をもった表情...。

世の中には、いろんな人々が存在していて、そしてもれなく、その人たちはいろんな感情を持ち合わせています。そういう意味で、いろんな「感情」を伴った女の子を描いていきたいなと思っています。

林ホノカさんの作品

昔の映画がもつ “ちょっとクセのある不思議な世界” が好き

—— 林さんの描く女の子からは、かわいさと同時に “怖さ” も感じるのですが、この “怖さ” は意図して表現されているんですか?

“怖さ” については、自分が小さい頃に衝撃を受けた本や映画、音楽などのアート作品からの影響が少なからずあると思っています。

一番印象に残っているのが、ヤン・シュヴァンクマイエルの映画『アリス』。小さい頃に母と一緒に見る機会があったのですが、映像が流れ始めて間もなく、私は号泣し出したそうです(笑)。当時は4〜5歳くらいだったんですが、登場するものたち(のビジュアル)が怖くてたまらなかったんだと思います。

—— 4〜5歳でシュヴァンクマイエル作品を見るとは、かなり強烈な体験でしたね(笑)。

そうですね(笑)。

その衝撃の出会い以降、小学校、中学校、高校と、なぜか節目節目で「あの映画はいったい何だったんだろう?」と、ふと考えることがあって。おそらくずっと心のどこかに引っかかっていたんだと思います。

大学生になり、ようやくきちんと背景などを調べて、改めて見直してみたんですが、そうしたら「この映画、いいな」って思ったんですね。

—— 苦手だったはずのものが、改めて観てみたら「好きなもの」になったということ?

我が家は、父も母も映画が大好きで、小さい頃からいろんなジャンルの映画をたくさん見せてもらっていました。

その中でも特に、古いファンタジー映画やSF映画が私のお気に入りで。昔の映画特有の、ハリボテ感満載のセットが醸し出す “偽物っぽさ” や “胡散臭さ” に、若干の恐怖を感じつつも、そんなちょっと変わった世界に行ってみたいような気持ちも同時にあって。

そういった映画をたくさん見てきた経験が、“ちょっとクセのある不思議な世界観” に魅了されるきっかけになったのかなと思っています。

—— ちょっとクセのあるものに惹かれるんですね。

はい。絵本や童話もすごく好きなんですけど、好きな理由も単にかわいい、単に楽しいだけではなくて、ちょっと怖い要素や教訓めいた厳しい要素もあるからこそ惹かれるんだと思っています。おはなしの世界なのに、「現実」について学ぶことができる。そういう点が面白いなと感じています。

あと、昔の外国のおもちゃ。昔からおもちゃは大好きなんですけど、とくに昔のちょっといびつだったり、顔が怖かったりするようなおもちゃにはすごく惹かれますね。

単にかわいい、楽しいだけではない、リアルを伝えてくれるものに惹かれるのかもしれません。

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楽しい時間を “提供できる” 側の人間になりたい

—— 今後のチャレンジについて教えてください。

現在制作している「女の子の作品」については、できるだけいろんな国の、いろんな人種の、いろんな性格の女の子をたくさん描いていきたいと思っています。そしてある程度の点数がたまったら、女の子たちを一斉に並べて見せるような展示をしたいです。

また、絵やイラスト制作だけでなく、自分でお話もつくって、それを自分の絵で表現して、伝えていくこともしていきたいです。絵本やアニメーションといったストーリー媒体にもチャレンジしてみたいですね。

—— なぜ、自らお話もつくりたいと思っているのでしょう?

自分がこれまで、たくさんの素晴らしい映画や本、作品に出会い感動し、そこから自由に想像を膨らませては、楽しい時間を過ごしてきたことの恩返しではないですけど、今後は自分が人々に楽しい時間を “提供できる” 側になれたらいいなと思っています。

—— 好きなものは好き、好きなものを追求していきたい ー そんな強い想いを感じた 林 ホノカさんのインタビューでした。独特の手法から生み出される、ちょっと不思議な女の子たちが一斉に並ぶ機会を楽しみにしています!本日はありがとうございました!

文・写真:mecelo編集部

林ホノカさんインタビュー 前編はこちら

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Icon林ホノカ

作家、イラストレーター