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立ち止まることで手にした “変化” への道 ー 自分らしさを目指して、変化し続けていく作家でありたい【後編】

自らの弱点を冷静に受け入れ、その克服のため、“変化すること” の試行錯誤を繰り返してきた jyari(じゃり)さん。後編では、ついに納得のいくテイストにめぐり会えたエピソードから、絵を描かなかった期間についての振り返りなど、ご自身のテイストの変化について、さらに深くお話しいただきます!

自分らしい、人間らしくない人物像を求めて

—— 最近の女の子のシリーズはどんなコンセプトで制作されているのでしょう?

このシリーズは、自分の中で “より人間っぽいもの” を描きたくて、実験的に描いた作品です。

これよりちょっと前の作品では、頭はツルツルで、まだまだロボットっぽい印象の人物を描いていたんですけど、女の子のシリーズではちょっとキレイな服を着せたり、女の子らしい髪型を描いたり、今まで描いた中で一番人間に近いものになりました。

描いてみて思ったんですけど、服装や髪型を少し意識して描くだけでも、かなり感情が出るというか、無表情ではあるんですけど、なんとなく表情が見えてくるような印象になりますね。これは僕の中では発見でした。

—— 描くごとに、だんだんと自我が芽生えてきたような感じですね(笑)。

そうですね(笑)。

服装とか髪型とか、これくらい具体化したほうが、わかりやすくなることは分かってはいたんですけど。ああ、ついに人間らしいものを描いてしまった!というのが僕の感想です(笑)。とはいえ、これくらい伝わりやすい人物を描くのに5年はかかっているんですけどね。

—— 5年ですか。

はい。ロボットと金魚から始まって、そのうち金魚ばかりを描くようになって、ようやく赤ちゃんっぽい子どもが登場して。その子どもに服を着せ始めたり、おもちゃを持たせるようになって、そしてようやく自我のある、感情のある女の子が現れました。

個人的には、もう少し人間味は減らしたいとは思っています。ちょうどいい塩梅のところを今後も探っていきたいですね。

—— やはり人間らしくない人物を描きたいんだと。

人間を人間らしく描くことに秀でている方はめちゃくちゃいますし、テーマとしても絶対に被ってしまう。自分が描くのであれば、需要のことはさておき(笑)、やっぱり他と違うものを描きたいなと思っていて。人間ともなんとも言えないものを描けたら面白いんじゃないかなって。こういったこだわりが、オリジナリティに繋がっていったらいいですよね。

—— jyariさんらしい、人間らしくない人物像。とっても楽しみですね!

自分が納得できるところまで行きたいですね。なので、今後もいろいろと試していくつもりです。これまでを振り返ってみても、こうやって試行錯誤している時期が一番楽しいんですよね(笑)。周りの目を気にすることなく、自分の好きなものに 好きなだけ没頭して、実験できる時間が。

jyariさんの作品

都会の中で暮らしていても、常に求めるのは自然

—— 絵を描かない時は、どんなことをされているんですか?

東京に移ってからは、休みの日はもっぱら自然の多い公園に行きます。山とか森とかが恋しくなるので、自然が多く残っている場所に出かけたくなるんです。

そこで何をするわけでもなく、自然を充電しに行くじゃないですけど、座ってぼーっとしています。あと、自宅でも観葉植物を育てていて、都会の中であっても、自然に接する機会を頑張って作っています(笑)。

—— 作品は、とっても非現実的なんですけどね(笑)。

そうですね(笑)。でも将来は、自然の中で暮らしたいって思っていますよ。

—— ご出身が田舎だと言っていましたが、ご実家のあたりはどんな感じなんですか?

めちゃくちゃ山奥ってほどでもないんですけど、けっこうな田舎です。ちょっと行けばでっかい山があって、山の麓(ふもと)には川が流れていて、川の近くに家が建っていて。車でちょっと走れば、山に入ってしまうような場所だったので、小学校の下校時には、よくイノシシやシカに遭遇していましたね。

—— イノシシ怖いじゃないですか!

向かっては来ないですよ(笑)。遠くにいるのを発見したら、そそくさと迂回する。そのくらい田舎でした。

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表現や技術を学ぶ場として選んだ就職

—— 描かなかった期間についてですが、まったく何も描かなかったんですか?

正確にはゼロではなく、一年に一作品くらいは描いていました。

2013年に活動休止して、翌2014年に現在のアート系の会社に就職して、東京に移りました。会社に勤め出した頃は、新しい環境に慣れるのに必死で、かなり仕事に没頭していました。

—— なぜ、活動休止期間中に就職されたのでしょう?

現在の会社では、コンセプト画を描く仕事をしているんですが、働きながら絵のこと、表現することを学べる場所だと思い、就職しました。作品制作は一旦ストップして、技術だったり、表現だったり、その他いろんなことを学びながら、自分の描きたいもの、描きたくないものをゆっくり整理していきたいと考えていたので、そういった環境を探しました。

—— 就職されてどのくらいで、描きたい欲求は戻ってきたんですか?

けっこうすぐに(欲求が)湧いてきましたね(笑)。

ただ、仕事がら夜遅くなることも多かったので、すぐに活動を再開することは難しかったんです。最近ようやく仕事に慣れてきたこともあって、忙しくて疲れていても、それを超える描きたい欲求があるので、徐々に活動を再開するようになりました。

試行錯誤の果てに、ようやく掴んだ “汎用性” の兆し

—— 活動再開の記念的な作品はありますか?

一年に一作品は描いていたので、これがという作品はないんですが、このテイストで今後どんどん描いていきたい!って思えたのが「forest」という作品です。

2016年に描いたもので、自然を背景にメインのモチーフ(金魚)がいるという、まさに今描いているような構図で描き始めた頃のものです。このテイストだったら人間も描けそうだなって、初めて思えた、僕の中ではすごく印象的な作品です。

この「forest」を描いた日を境に、またどんどん絵を描いていこう!って、そういう気持ちになった作品でもあって。本当にこれ以降は、どんどん描けるようになって、制作時間も増えて、ロボットっぽいけど人物も登場するようになりましたね。

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—— 「forest」のモチーフは金魚ですが、同じように人間も描けそうだと思ったんですか?

はい。この描き方だったら人間も描けるかもしれないって、自分の中で人物を描くイメージも出てきて、すごいピンってきたのを覚えていますね。

—— こういう閃き(ひらめき)って、突然にやってくるんですか? やっぱり事前に準備というか、何かをやってきたことの積み重ねの結果として、閃いたんですか?

活動休止する以前の作品って、けっこう描き込んでいて、ちょっとリアルな感じだったんです。このテイストで人物は違うなってずっと思っていて。どうやったら、もっとシンプルなスタイルで表現できないかと、ラフを描きつづけて、できたのがこの線で表現した金魚だったんです。3ヶ月くらいは、ああでもないこうでもないなんて言いながら試行錯誤していました。

—— 試行錯誤された結果としての閃きだったんですね。

この頃は、スタイルを変えたいという想いが本当に強かった時期で。なんでも描けるテイストが欲しくて欲しくて、本当に毎日考えまくっていました。

—— それを掴めたのが「forest」だったんですね。

そうです。もうこのテイストなら、なんでも描けそうだって思いました。

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立ち止まったからこそ、手に入れられた “変化” への道

—— 悩まれてから、ご自身が納得できるテイストにめぐり会うまで、どのくらいかかりましたか?

2013年頃から悩むようになって、ようやく描きたかった人間らしいものを描けるようになったのが2017年。4年近くはかかりましたね(笑)。

—— その4年間を振り返ってみていかがですか?

振り返ってみて思うのは、描くことを一旦止めてみて良かったということでしょうか。メリハリは大事だなと。当時、無理やりにでもテイストを変えようと思ったら、それはそれで変えられたのかもしれません。ですが、おそらく自分の中でピンとくるレベルのものは作れなかったと思います。

現在のテイストは、4〜5年前に比べて、表現の自由度がものすごく広がっていて、おかげで描くこともめちゃくちゃ楽しくなってきているので、あえて積極的に描かない時期を作ったことは良い選択だったと、改めて思いますね。

一旦立ち止まったことで、やりたいこととやりたくないこと、描きたいものと描きたくないものの整理がきちんとできたのかなと思います。

—— 描くペースを落とすことに対して、画力が落ちるとか、そういった不安はありましたか?

描かなかった期間も、職場では毎日のようにアートやデザインに関わっていたので、(画力が)落ちるということはなかったです。むしろ、いろいろ学ばせてもらって、スキルは上がったと思っています。仕事となると簡単なことではないので、毎日何かしら学ぶことはありますし、良いものにしないといけないという責任もありますから。

—— 表現力やスキルを上げていける、そんな職場環境だったんですね。

はい。そこは、描かない分、しっかり学べる場所を意図的に選びました。作品づくりに直結しなかったとしても、新しいもの、新しいことに触れられる環境は必要だと思っていましたので。

—— 今後、チャレンジしたいことについて教えてください。

最近ようやく、これでやっていきたいと思えるテイストが固まってきたので、まずは溜まっている、描きたいモチーフを片っ端からどんどん描いていく予定です。

そして、作品がある程度たまったら展示を開催したいですね。展示では、めちゃくちゃたくさんの作品を飾りたいので、それまではひたすらに描き続けようと思っています。

—— ご自身の弱点を冷静に受け止め、自ら変化することに挑戦し続ける jyariさん。グリーンにあふれた部屋で淡々とお話しされる姿からはイメージしがたい、常に高いレベルでの表現を目指す情熱が伝わってくるインタビューでした。本日はありがとうございました!

文・写真:mecelo編集部

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アーティスト、イラストレーター