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大好きなものばかりが、作品には凝縮されているんです ー それが相手に一番伝わる方法だから【後編】

赤とピンクで彩られた部屋。ウサギの仮面を被った、ちょっとエロティックな乙女たち。「現実と夢の間(はざま)」をテーマに、独特な世界を表現しつづける有村佳奈さん。後編では、有村さんが同志として応援しているアイドルから、子供の頃の経験から身についた術、そして今後のチャレンジについて、多彩なテーマでお話いただきました。

本当に好きなものばかり!でもこれが一番伝わるんです

—— 有村さんの作品といえば、赤色!ピンク色!という印象がありますが、こちらは女性(乙女)を表現するための色なのでしょうか?

この2色はずっーと好きな色で、自然によく使ってしまう色なんです。よく使うと言っても、好きだから意図的に選んでいるのではなく、スタート時点では違う色の絵を描く予定だったのが、いつの間にかこの色になっているという(笑)。予定では、青系で塗るはずだったのに、気がついたら赤系で塗ってしまっていた!みたいな感じです(笑)。

—— 無意識に、内面から出てくる色なんですね。

昔は、どの色も同じように上手く配分するバランス派だったんですけどね。例えば、赤系色をこれだけ使ったんだから、青系色もこのぐらい使っておかないとって。色については、そういう風に考えていたところがあって。

—— もともとは、バランス派でいらしたんですね。

私、てんびん座なんですけど。てんびん座の絵ってバランスを取っているじゃないですか(笑)。というのは冗談ですけど。これだけやったんだったら、こっちもこれだけやろうって、バランスを見ながらやってしまうところはあります。

この色をこれだけ使ったんだから、今度はこっちの色も使うべきとか。赤系を研究してきたんだから、次は青系を研究するべきとか。勝手に自分で自分を縛っているところがあったんです。

これって不思議なことに、誰かに言われたことではないし、ましてやそんな決まりがあるわけでもないのに、いつの間にか自分の中でルール化していたんです。なぜ?って聞かれたら、本当に何でなんだろう?って思っちゃうんですけど。なぜか思い込んでいたんです。

でもある時、「自分の好きな色をとことん追求したらいいじゃない」って言われて、すごく納得したんです。それまでは、自分の好きなものだけを使うことにどこか抵抗があったんですよね。でもその言葉をきっかけに、抵抗感もだんだん薄れていって、気がついたら赤の色が主張してきたというわけです。

—— なるほど。有村さんの作品から放たれているパワーって、有村さんの好きなものが凝縮しているゆえの力強さなんですね!

本当に好きなものばかりが凝縮されています(笑)。でもそれが、人にものを伝える手段としては、一番伝わる方法だと思っています。いろんなことを試した結果、結局好きなものしか残らないんだなって。半端なものではなく、自分自身が本当に好きなもの、ハマっているもの、体験したこと、感じたことじゃないと相手には伝わらないんだって思います。

いち表現者として尊敬する同志 ー アンジュルム

—— その “本当に好きなもの” の中に、アンジュルムを挙げられていますね。乙女(アイドルグループ)という観点で興味があるとか?

いいえ、単純に好きなんです。音楽もビジュアルも。あと本人たちのキャラクターもですね。もちろん、卒業した子も含めて、みんな好き。見ていると、とても楽しくなるんですよ。あとは、グループとしてのストーリー性に惹かれているところもあります。総じて、私にとっての癒しですね(笑)。

—— どんなストーリー性に惹かれたのでしょう?

デビューしてから順風満帆ではなかったというか、いろいろと紆余曲折あったグループなので、応援したくなるというか。うん、応援したいですね!

—— どんなところが、応援したい気持ちになるのでしょう?

ストイックなところというか、ダンスや歌などのパフォーマンスがかっこいいのはもちろんなんですが。そもそも、アイドルに対してすごいなって初めて感じたのが、「表現すること」を学んでいた美大生の頃で。

自分よりも年齢の若い子たちが、己(おのれ)の身体を通して「自分たちが思う可愛さ・ロックさ」を自己表現できていることに感動してしまって。当時は、自分の表現方法を模索していた時でもあったので、すでに自己表現できているということに、ただただすごいなって思いました。

身体表現を通して表舞台に立つということは、当然その人はバッシングされるというか、誰かと比較される対象になることでもあって。中には「批判されること」を気にしているアイドルたちも絶対にいると思うんですけど、それでも批判を恐れず、目標に向かって走っていく姿は、見ていてかっこいいなぁって感じますね。

—— 同じ表現者として、応援したいということ?

私の中でアンジュルムは、単純にアイドルというよりは、目標に対して真っ直ぐな “強さ” と自分にはない表現の魅力を持つ、ひとつのパフォーマンス集団っていう位置づけなんです。同じく表現を追求する者として、応援したくなるのかもしれません。

有村佳奈さんの作品

幾度にわたる転校体験が、執着しないマインドを作ってくれた

—— ご出身は鹿児島で、現在は大阪にお住まいとのこと。お話を聞いていると、大阪弁にはまだ染まっていないようですね(笑)。

私すごい(方言が)伝染りやすい人なので、大阪に行ったらすぐ大阪弁になるって思っていたんですけど(笑)。今の職場で(大阪弁を)使っている人がいないから、今のところはまだ大阪弁にはなっていないんですけど。職場に大阪弁の方が入ってきたら、間違いなく、もう速攻で大阪弁になっちゃうと思います(笑)。

もともと転勤族というか、親の仕事の関係でいろんな土地に住んでいたこともあって、おそらくはその習性で、その土地の言葉をすばやく覚えるスキルが身に付いたんだと思います。

—— 馴染まれるのが早いんですね。

そうです、早く馴染まなければ!って。

—— 転勤は全国各地へ?

鹿児島の中での移動だけです。でも同じ鹿児島県内といっても、細かいイントネーションがけっこう違うんですよ。

中学までは頻繁に引っ越しをしていて。小学生の頃は、いろんな土地を味わえることもあって、あまり苦には思っていなかったんですけど。中学に上がって、転校って思っている以上に苦なんだってことに気づいたんです。

—— 何があったんですか!?

ちょっと不まじめな学校から、真面目な学校に移ったことがあって。私も真面目な方ではあったんですけど、移った先がより真面目だったんです。規則がぜんぜん違ってて、そういうときは馴染むのにけっこう苦労しましたね。そのときは、転校生って大変だわっ!って実感しましたね(笑)。

—— 具体的に、どんな苦労があったんですか?

授業の始まり方ひとつとっても違いました。ちょっと不まじめな方では、次の授業の始業チャイムが鳴っても、皆すぐには着席しないんです(笑)。授業もチャイムが鳴ったからといって、すぐにスタートするわけでもないし、先生もうるさくは注意してこない。ちょっとゆるい感じだったんです。でも、次の真面目な学校では、授業が始まる前には全員きっちり着席していて、授業も10秒間の黙祷を行ってから開始するという決まりがあって。

それぞれの学校で「当たり前」とされていることが180度違っていたんです。学校の雰囲気も全く違っていたので、この「当たり前の違い」にはすごくびっくりしましたね。環境でこうも規則が違うのかと。OKだと思っていたことが、場所が変わるとNGになる、頭では何となく理解できていても、言葉にできないモヤモヤは感じていましたね。

—— 違いというものに敏感な年代でもありますからね。

本当にそうです。

—— 引っ越しや進学などで、新しい土地に馴染むことを幾度もされてきました。何か得たことはありますか?

いろいろ挑戦しやすいというか、ひとつのことに執着し過ぎないところは、引っ越しの経験がちょっとはつながっているかもしれないですね。ダメだったら次に行こう!失敗しても次につなげられるからって。何でも良い方向に持って行こうとするところはあります。

—— なるほど。執着することなく、次へ次へ進めていける。

そうですね。人が持っている芯みたいなものって、そう簡単には変わらないと思っているので、逆にその他はチェンジしていける、チェンジしていこう!って、そういうマインドになった気はしますね。

“体験” できる「夢と現実の間(はざま)」を作り上げたい

—— 今後のチャレンジとして、空間全体を通して、ご自身のテーマ・世界観を追求した展覧会を国内外でやっていきたいと伺っています。

会場で、本物の作品を目の当たりにしたときの感動って、ぜんぜん質の違うものだっと思っていて。私も美術館やギャラリーへ足を運んで、直にすごく良いものを見ると、ものすごい元気になるというか、新しい刺激をもらったという感覚になるんですね。自分がそのように感じてきたからこそ、人にも同じように感じてもらいたい、伝えたいっていう想いがあります。

—— 平面以外の表現も取り入れて?

絵も描きつつ、それは表現したい世界のモチーフのひとつとして、もっと大きな、空間全体を作り込みたいという夢があります。メインは平面作品になるとは思いますが。例えば、絵の中のうさぎの女の子が立体作品になっていたら、より面白くなるんじゃないかとか。赤系テイストの作品を多く作っているので、空間全体が赤い、そんな部屋を作り出すとか。

—— 真っ赤な空間、それだけでも不思議な感覚に陥りそうですね!

それこそ、「あ、他人の夢の中に迷い込んじゃった!」って思わせられるような空間にしたいです。「ここ入っちゃっていいの?」って(笑)。ファンタジックだけど、どこか妖しげで、生々しい雰囲気を目指して作りたいですね。

イメージは、会場に足を踏み入れたら、そこには寝室のような空間が広がっていて。そこから次の空間、次の空間って進んでいくうちに、気づけば夢の中の世界へ迷い込んでる。あぁ、楽しそう!

—— 夢の中に入っていくという “新たな感覚” を、身体全体で体験できそうですね。

これまで体感したことのない空間に入っていく感覚って、とても楽しいと思うんですよ。先日個展を開催したときも、「絵から香りがするみたい」「知らない女の子の部屋を覗いているようで、ドキドキした」っていう感想をいただいて。それを聞いたときに、空間全体を使って、私なりの「夢と現実の間(はざま)」をもっと追求していきたいと思いました。

—— 夢の世界、脳の中の世界。イメージでしかなかった世界を “体感” できるアート。ぜひ実現させてください!楽しみにしています。本日はありがとうございました。

文:mecelo編集部 / 写真:村松 成美

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