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絵を描くだけではない フリーランスで働くということ【後編】

フリーランスのイラストレーターとして企画・営業をしながら活動している佳矢乃さん。後半では、絵を買ってもらえるだけで嬉しくなってしまった新人時代、正当な対価をもらうことの大切さ、佳矢乃さん自身が癒された大切な絵、作品に込めた想いなどをお聞きしています。

足元を見られた低すぎるギャラ

—— 20年間お仕事をされてきた中で、苦労したことはありますか?

主にクライアントからお仕事をいただくので画家の方とは違う悩みかもしれませんが、駆け出しの頃は、クライアントから提示される金額が異常に低かったですね。

「これだけ描かせてあげるんだから、ギャラはこのくらいでいいよね?」と、作品を世に出したいイラストレーターの足元が見られていました。

—— その条件は受け入れたんですか?

今は、こちらの希望に見合うものを提示していただくこともあるのですが、そうでない時は交渉しますし、場合によっては拒否させていただくこともあります。
以前一度だけ、言われたままに受け入れて失敗したことがあって・・・。

駆け出しの頃、制作料の提示もないまま「売ってあげるよ」と作品を吸い取られたことがあったんです。
その直後に、先輩イラストレーターの方に「自分の描いた作品に、ちゃんと責任を持ちなさい」と教えられたんです。「作品を作ることって、奉仕活動ではないんだよ」って。

責任を持つというのは、相手からも作品の対価をちゃんともらうことなんです。
たとえば、それが思ったほど価値を見出してもらえない場合は、必ずクレジットを入れてもらって、次の仕事に繋げるべきなんですよね。

私も描き始めた時に陥りがちだったんですが、自分の絵を使ってもらうだけで嬉しくなってしまって、ついつい安い条件でも受け入れてしまうんですよ。
それはすごくピュアで素敵な気持ちなので悪いことではないんですけど、残念なことに世の中には、その気持ちを利用して安く描かせようと考える人がいることも事実なんです。

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—— 一度安い条件で受け入れてしまうと、次も安く提示されてしまいますよね。

そうなんです。そうなるとこの業界は、どんどん先細りしていってしまうと私は思っているんです。

若いイラストレーターの中には、バイトや別の仕事をしている人も多いと聞きます。
特に最近はクライアントのイラストに対する予算も下がってきているので、この仕事だけで食べていける人は一握りのようなんです。

イラストってひとつの文化なので、イラストレーターとして食べていける人がどんどん増えて業界全体が盛り上がれば、文化的にももっと豊かになると思うんです。文化が豊かになるのは、平和の証ですからね。

この業界の文化や価値を下げないためにも、最低でもこのくらいは価値があるというのを私たちが踏ん張っていかないといけないと思ってます。

私よりも上の世代の先輩方も、すごく頑張ってクレジット表記や広告の使用料などの権利を手に入れてくださいました。
著作権は作家側にあるということも学ばせていただいたので、そういったことを引き継いで、継承していきたいですね。

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離婚で強まったイラストレーターとしての覚悟

—— 個展よりも企業から仕事を受注する方が経済的には潤いますか?

確かに企業からのお仕事の方が、まとまったお金をいただけますね。

個展はギャラリー代も高いですし、絵が売れても販売手数料をお支払いするシステムなので資金が必要なんです。皆さんどうされているのか教えていただきたいぐらいですね(笑)。

でも個展は、お客様がどう感じてくださっているのかを直接聞くことができますし、なにより自分が描きたい絵が描ける楽しさがあります。

それに個展は絵の価値を自分で決められるので、この絵に対してこの金額を出すというファンが増えれば増えるほど、やりやすくなるんでしょうね。
でも私がそこを目指すのは、まだまだ足元がグラグラしているので、今はクライアントからの依頼と個展の同時進行でやっています。

—— 会社員からの転身に不安はありませんでしたか?

離婚した時は、子ども2人のために安定した会社勤めをしようかと悩みました。でも自分の心に問いかけて、やっぱり絵を描きたいって答えが出たんです。それで悩みに悩んで、「絵だけで、この子達を食べさせていく!!」と腹をくくったんです。

東京での営業も頑張りましたし、グッズも作りました。
その中で、やっぱりお客様の反応を直に感じないと、実際はどう評価されているのかわからないと感じたんです。お客様の反応をダイレクトに感じたいと思うようになったのは、この頃からですね。

人の存在価値に優劣はない

—— 佳矢乃さん自信が、影響を受けた作家の方はいらっしゃいますか?

すごく辛かった時に、有元利夫さんの絵に救われました。
小説家の宮本輝さんの表紙絵にも使われた有名な画家の方なんですが、亡くなられた今もファンが多いから、定期的に半蔵門(東京)のギャラリーで展示会をしているんです。

以前、毎回見に行っていた時期があって、行く度に涙が溢れてきて・・・。もちろん泣くのは、その時の自分の辛さに対してではなくて、その絵に感動して心が癒されていく涙なんです。

一番心に響いた絵は、棺桶に入っている人が上半身だけ起こしている絵でした。
人はいつかは死ぬ。どんな人もみんな死んでいく。名誉ある人も権力を持つ人も。価値のない人はいない。だからこそ、どんな人も「存在しているだけでいいんや」と感じたんです。

それに気付いた時に、ワーッと涙が出てきてしまって「今を楽しまなかったら損や」、「私、何してんやろ」と目が覚めたんです。

おこがましいのですが、私の絵で癒される人が一人でもいてくれたら光栄ですし、そういう絵を描いていきたいですね。

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—— 作品のコンセプトやテーマを教えてください。

「ええ格好しぃやな」って自分でも思うんですけど(笑)、生きていると忘れがちな、自分の本当の在り方を思い出してもらえるような橋渡しができる作品を作りたいと思って、いつも描いています。

世の中では、これができるから価値がある人だと取り上げられることが多いですが、違いますよね。
人はそれぞれ色々な条件や環境の中で生きているから、誰かと比べた結果、何かと比べた結果は関係なくて、生きているだけでその存在に価値があるんです。
人は存在していることが素晴らしいんです。たとえ誰かに認められなくても。

認められたい気持ちを原動力にして頑張る人もたくさんいますから否定はしませんが、もっと肩の力を抜いて生きてもいいと思うんです。

もっともっと、自分のことを肯定して生きて欲しいんです。
自分のことを労わってあげて、自分のことを喜ばせて欲しいですね。

私自身がそれに気付いて楽になったので、自分がどう感じるのか、どう思うのか、心の部分を大事にしていいんだっていうことが伝われば嬉しいですね。

—— これからチャレンジしたいお仕事はありますか?

やりたい事はいっぱいあるんですよ(笑)。

今のところ3つあって、ひとつは『しずくふたつ』の絵に、描いた時にインスピレーションで浮かんだ文章を入れて画文集のようなものを発行したいですね。

2つ目は銅版画も数年前からやり始めたので、銅版画集も出したいです。そのためにも制作の時間をもっと確保したいんですけど、なかなか難しいですね。

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3つ目は、自費出版した『生まれる日』という絵本が400冊くらい売れたんですが、購入された方の中にはお友達の出産祝いに再購入された方も何人かいらして嬉しかったです。
『しずくふたつ』と『生まれてくる魂がそこを選んでくれた』というのが繋がっているので、絵本制作ももっとやりたいですね。

もちろんmeceloパートナープランも募集してますので、これからもよろしくお願いします(笑)。

—— 親子関係、夫婦関係に悩んだ過去も、明るく小気味よい口調でお話してくださった佳矢乃さん。フリーランスのイラストレーターとして企画、営業もされるだけあって、楽しいお話に時間を早く感じたほどです。「人の存在に優劣はないと気付き、生きやすくなった」と語った佳矢乃さんが創り出す作品が、これからも楽しみです。

文・写真:mecelo編集部

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Data佳矢乃

イラストレーター・アーティスト