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100% 私好みの作品を生み出すことで、皆が「自身のものさし」に気づくきっかけを広めていきたい【後編】

リアルな描写と独自の鮮やかな配色が美しい絵や商品を制作する 峰雪mineyukiさん。後編では、オリジナル・ブランドのコンセプトから、アートとデザインの違いへの探求、そして今後のチャンレンジについてお話しいただきます。

誰かのフィルターを通すことで、見える世界も変わってくる

—— 絵を描くことが好きだった峰雪mineyukiさんが、アート活動を始めるにあたって、オリジナル・ブランドを立ち上げることにしたのは、何故だったのでしょう?

すごくシンプルに、最初は仕事がこないじゃないですか。実績のないイラストレーターに仕事を依頼する人はいません。では、どうすればいいのか。仕事が向こうからやってこないのであれば、自ら仕事を作ればいいじゃないかって。それが、オリジナル・ブランド立ち上げのきっかけでした。

自分自身のブランドであれば、自分の好きなもの、自分が本当に欲しいと思えるものを自由につくることができます。それに、自分がすごく欲しいものであれば、自分と似た感性をもった方たちにも受け入れられやすいと思ったので、そういったマーケットを狙っていく考えもありましたね。

—— オリジナル・ブランド「made bule」は、どういったコンセプトで展開されているんですか?

「シックでちょっとかわいい」と「ありそうでない」がブランドのコンセプトです。私の好きなもの、私が本当に欲しいと感じるものを商品として展開しています。

ぶっちゃけ、自分でブランドを立ち上げるまでは、自分が本当に欲しいと思えるデザインのものが市場に売っていないかったんです。私がいいなと感じるものは、まだこの世に生まれていない。ならば、自分で作ってしまおうと。

商品をご覧になっていただくと気づくと思いますが、扱っているモチーフや組み合わせがちょっと独特なものが多いです。それは、私自身が本当に欲しいものを制作しているのと、自分と感性が似ている方に喜ばれるもの、そういった観点から作っているためです。

せっかく自分が作るんだったら、私「峰雪mineyuki」というフィルターを通して見える “世界” を表現することに意義があると思っているので。

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—— 誰かの「フィルター」を通して見ることにこそ、意味があるのだと。

私は、商品のモチーフとして虫を選ぶことがよくあります。でも、虫って苦手な人が多いじゃないですか。イベントに出展した際も、お客さまから「虫は好きじゃないので、虫じゃない商品はありませんか?」って聞かれることもよくあります(笑)。

ただ、虫が一般的には嫌われやすい対象だとしても、世の中には虫のことをこよなく愛する人たちも存在します。そういった愛好家さんたちのフィルターを通して表現されたものって、苦手な虫の良さに気づく、良いきっかけになったりもすると思っていて。

私というフィルターを通して見える「虫」の方が、より「虫」の魅力に気づいてもらいやすいと思うんです。

—— 「大好き!」という気持ちが込められたフィルターを通して見える景色は、いつもとはちょっと変わって見えるということですね。

そうです。私も、自分の「虫が好き」というフィルターを通して表現していくことで、見た方がそれまで苦手だなと思っていた生き物に対して、ちょっとでも親近感であったり、愛情であったりを感じてもらえるようになったらいいなと思っています。

何かを表現する人たちって、そういう役割も担っているのかなって思いますね。「作家」というフィルターを通して表現することで、見る人に新しい気づきを与えたり、よりそのものを好きになってもらったり。これもアートがもつ機能のひとつなのかもしれません。

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“アートとデザインの境目” に挑戦した卒業制作

—— 峰雪mineyukiさんが表現したい生き物たちの「リアルさ」ですが、商品展開するときの妨げになってしまうということはありませんか?

生き物のリアルさ、いわゆる獣臭さやちょっとグロテスクな部分のことだと思うのですが、そういった部分をそのまま前面に出してしまうのは、絵画としての絵では良くても、“デザイン” として扱う際にはNGだと思っています。

「made blue」で展開している商品は、日常生活の中で機能し、かつ使用できるものでなければいけないと考えているので、商品展開をするときは、そういった部分が前面に出ないように工夫はしています。

例えば、カメムシがいっぱい描かれたようなデザインであっても、全体的にスタイリッシュで、色味がきれいなものであれば使いやすくなるじゃないですか。そういった、日常で使いやすくするための工夫は、商品の方では必要になってきますね。

—— アートと商品、どちらも大好きなモチーフを扱いながらも、それぞれの特性に合わせた表現をされているんですね。

そうですね。“絵” をイラストレーション(商品のデザイン)としてを扱う際、アートとデザインの差という意味で表現を変えている部分はあるのですが、それを「一枚の絵」で表現する、そんな試みに挑戦した作品もあるんです。

今年の卒業制作の一部ですが、「全体で一枚の絵としても機能しつつ、その一部をトリミングして、さらに小さい一枚絵や柄・パターンとしても機能する」というコンセプトで制作した平面作品です。

自分の中では、今後の制作の基盤になるんじゃないかと思えるコンセプトで、一枚の絵でありながら、そこからさまざまに展開ができて、いろんな可能性を含んでいるという、絵画でもあり、パターンとしても機能する作品です。

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—— おっしゃるように、一枚絵としても、パターンとしても展開できる作品ですね。

一般的な絵画作品は、天地が決まっていると思うのですが、この作品には、どの向きに飾っても、どの部分を使用しても、絵画・パターンとして機能するという特徴があります。

—— 飾る向きにしてもトリミングにしても、自分の好きなようにアレンジできるということですね。絵とともに机や洋服も展示されていますが、これらにはどんな意味があるのでしょう?

食卓としての机とトルソーにかかった洋服。これらには「衣食」の意味があり、人間の「住空間」を表しています。この「住空間」は、「日常空間」を表していて、洋服等は “日常を装飾する” イラストレーション(デザイン)として表現しています。

壁にかかった絵を「窓」に見立て、絵の世界観が日常空間のなかに侵食・拡大していく様を表現しています。

—— 絵の世界観が、日常空間にあふれ出てきているんですね!

絵とデザインされたものの違い。アートとデザインの違い。それって何だろうって突き詰めていったときに、私の中でどんどん境目がなくなっていったんです。

例えば、モンドリアンに見られるような、いわゆる絵画なんだけど、デザインとしても機能する作品もあれば、自動車や建築などの優れたデザインがアートとして機能することもあります。この作品は、そういった “アートとデザインの境目” を表現してみたいという試みでもありました。

—— そう考えると、この作品では、アートが先なのか、デザインが先なのか、どちらでも受け取れるところがユニークですよね。

この作品が、例えば、アートとデザインの関係性やそれぞれの特徴などについて考えるきっかけになったら嬉しいですよね。

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「自分のものさし」で選ぶ “きっかけ” を提供していきたい

—— 最後に、今後のチャレンジについて教えてください。

私が、自分の本当に好きなもの、本当に欲しいものが売られていないからこそ、自分のブランドを立ち上げたように、“その人自身の好み” という「ものさし」で物事を選ぶ、判断するきっかけとなる作品を今後も展開していきたいと思っています。

—— “その人自身の好み” という「ものさし」ですか?

これは私の主観ですが、今これが流行っているから買うとか、有名な人がおすすめしているから使うとか、自分の好みというより、“自分以外の人の好み” で物事を選んでいる人って多いんじゃないかなと感じています。「これは今年の流行りだから」と言っている人を見ると、本当にそれはその人自身の基準で好きなものを選んでいるのだろうかって、疑問に思ってしまって。

そういった社会や考え方に対して、もっと “個人の気持ち” に訴えかけるような、個人の心を揺さぶるような、そんなアートを生み出していけたらいいなと思っています。

—— 流行っているからではなく、“私が好きだから” という理由で動いて欲しいんだと。

アートを楽しむというと、ちょっとハイレベルなことのように感じてしまう方も多いかもしれませんが、これって、実は自分の好きなものを選ぶことの延長だと思っていて。

好きな洋服がある、好きな絵がある、好きな作家がいる。それって、その方にその人自身の「ものさし」があるということだと思うんですね。なので、皆さんが「ご自身のものさし」でもっと物事を選べるように、私はそのきっかけを今後も提供していけたらいいなと思っています。

—— 好きな絵の仕事が来ないのなら、自分の好きなものが売っていないのなら、「自分で作ってしまったらいいじゃない!」 ー 峰雪mineyukiさんの芯の強さを体現したようなこの言葉に背中を押されっぱなしのインタビューでした。本日はありがとうございました!

文:mecelo編集部 / 写真:神戸 奈央・撮影協力:広島フィルム・コミッション

峰雪mineyukiさんインタビュー 前編はこちら

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イラストレーター