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何才になっても挑戦していいんだ! ー ビビリで人見知りな私がニューヨークで学んだ大事なこと【後編】

ご自分では “ビビリ” だというものの、単身でニューヨークへ渡ったり、やってきたこととは全く別の世界へ飛び込んだりと、行動力あふれる三輪夏生さん。そんな三輪さんに、これまでの多彩な人生とそしてご自身と絵の関わりについてお話いただきました。

絵本研究を活かして、いろんな家族の姿を表現したい

—— ニューヨークでは、挑戦しやすい環境があったということでしたが、日本ではまだまだ難しいところもありそうですね。特に女性は「そんなことしていて、結婚はどうするの?」なんて言われる傾向はまだまだ高そうです。

そういうの、ありますよね。

女性といえば、昔から “女の子らしく” って言われることに、すごく違和感がありました。そういう違和感を持っていたので、より保育について深く学べたことは、自分にとってプラスになったなと思っています。保育の世界って、けっこうジェンダーの問題と深く結びついているんですね。育児や保育は、まだまだ女性の仕事だと思われがちですし。

性別によって役割や仕事が決まりがちなこととか、昔から気にはなっていたけど、自分の中ではっきりと言語化できてなかったことが、保育分野の先人たちからよい影響を受けながら、自身の課題として取り組めたことは本当に良かったと思っています。

—— 保育は、まさに行くべきして行く場所だったんですね。

保育の学校に行くまでは、お母さんといえばエプロンを付けていて、お父さんといえばネクタイを締めていてって、無意識にそういう絵ばかりを描いていたんです。実際、自分の周りにいる人たちは、そういう人たちだけじゃないのに。

洗脳されているというか、そういうイメージに染まっているというか。ニューヨークであれだけ、色んな人がいるんだなって身をもって体験して帰ってきたというのに(笑)。

保育やジェンダーについて学んでからは、そういうところにすごく意識がいくようになりました。とくに絵本の世界って、時間の流れがゆっくりなので、今だにジェンダーのステレオタイプが色濃く残っていて、時代とのギャップがあるんですよね。

—— たしかに、そういうイメージはありますね。

保育の専門時代、絵本の中のジェンダーというテーマで研究をしていたんですけど、日本の絵本って、ステレオタイプで描かれていることが多いんですよ。でもカナダとかに行くと、ゲイのお父さんが出てきたりとか、いろんな家族の姿が描かれているんです。

エプロン姿のお母さんがイヤだとか、ネクタイ締めたお父さんがダメということではなくて、そういう人たちもいるし、でもそうじゃない人たちもいる。現実はそうじゃないですか。研究を通して、いろんなカタチの家族、いろんなセクシュアリティを持った家族、いろんな人をもっと描けたらいいなって、強く思うようになりました。

—— 現実では、いろんな家族の姿があるのに、絵本では最もわかりやすい姿をとってしまう傾向があると。

研究では、とにかくいっぱい絵本を読んで、その絵本に登場する人たちのキャラクターや服装、ヘアスタイル、そういったデータをたくさん取って、集計して、どういう風に描かれる傾向があるのかを調べました。

絵本を集める中で、海外のジェンダーフリー思想を持った絵本に出会う機会もあって、それらと日本の絵本を比較したり、また日本にもそういった絵本があるのどうかを調べたり。

—— その論文の内容にすごく興味があるんですけど、どこかで読むことはできますか?

ええ!!!本当ですか?そんなこと言われたの初めてです。どこに出すこともなく、今は家で眠っていますよ。

—— ええ!もったいない!!!自分の子どもに、いろんな絵本を見せてあげたい、いろんな世界を見せてあげたいと考えている親御さんは多いと思いますよ。ブログでぜひ!

ちょっと考えてみます!なんだか楽しくなってきましたね!

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飽き性だから、いろんな表現をバランスよくやっていきたい

—— 現在は、WEBとイラストと絵本の3つをメインに活動されていらっしゃいますね。

絵本はかなりゆっくりペースで進めていて、WEBとイラスト以外でいうと、漫画をSNSにアップしています。日常を描いた漫画です。

—— 漫画もずっと描いてきているんですか?

漫画は、小学生の頃から好きだったこともあって、ずっと描いていますね。今のようなエッセイ漫画ではなく、創作漫画で、ZINE(ジン)のような冊子にして配布していました。

今のように、すごい頻度で描くようになったのは、iPadを手に入れてからです。私の漫画制作に、iPadがすごくよくハマったというか。もうスラスラ描けるのがいいんでしょうね、制作スピードがグッと上がりました。もう紙とペンには戻れないです(笑)。

—— iPadを手に入れたのはいつ頃?

1年くらい前かな。ごく最近ですよ。

—— では、描くことに絞ると、イラスト・漫画・絵本の3つをやられているということですね。

ちょっと飽き性なところもあるので、いろんなことをやっていたいタイプなんだと思います。漫画も描きたいし、イラストもやりたいし、絵本も作りたい!って(笑)。

どれかひとつのことに集中している時期もありますけど、一年とか大きい単位でみれば、いろんなことをバランスよくやっていると思います。

—— なるほど。ひとつのことに飽きてしまったときに、他の表現方法があるというのはよいですね。余談ですが、Instagramに投稿されている食べ物のイラスト、あのシリーズすごく好きです!

ありがとうございます!食べ物のイラストは、私の中では “休憩” って感じで描いているものなんです、実は(笑)。

—— 休憩!?

もう漫画すらも描きたくな〜い!というときは、だいたい食べ物を描いてます(笑)。

目の前にあるものを見て描くって、精神的にはすごく楽なんです。想像力を働かせなくていいというところが、ちょっと楽というか。なので、ちょっとお疲れだけど、手は動かしたいなってときには、食べ物を描きます。

—— なるほど。では、美味しそうなスイーツの絵がアップされてきたときは、三輪さんお疲れなんだなって想像したらいいんですね(笑)

そうですね。この人は今リラックスしてるんだなって(笑)。

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—— 漫画を描くにあたって、何かルールはありますか?

日常を描いていきたいなとは思っています。何でもない普通の風景とか、そこら辺を歩いているような人たちとか。

—— なぜ日常なのでしょう?

もともと人の生活というものには興味がありました。ニューヨークでよく使っていたサブウェイが、サブウェイといっても地上を走る線だったんですけど、乗っていると窓から生活風景が見えるんですよ。たまに家の中がチラッと見えたり(笑)。

そういう人々の生活を見るのがすごく好きで、見ていていつも思うのは、生活って楽しいなってこと。つまらなくはないなって。

日常が特別ではないですけど、そこに幸せを、特別なものを感じられたらハッピーだなって思っていて。そうありたいって気持ちもあるんでしょうね。

—— 日常がおもしろい、だからこそ漫画にして、残されているんですね。

そういう視点ではいたいなって思っています。どんなときでも、日常を面白がれる人間でいたいなって。

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三輪夏生さんの作品

認めてこれなかった部分もひっくるめて、自分の全部を好きになりたい

—— 三輪さんにとって、絵を描くことは、本当に日常というか、ごく普通のことのように思えるんですが、これまでに絵を描くのが嫌だな、辛いだなって思ったことはありますか?

あります、あります。ちょくちょくありますよ(笑)。

個展とか大きなイベントが終わると、燃え尽きちゃうみたいで、終わった途端にスーって気力がなくなっちゃいます。保育に進みたいって思ったときも、ちょうど制作意欲が下がっていた時期で、気持ちが下がっている時は絵とは別のことをやりたくなるんでしょうね。

でも、最近はその波が落ち着いてきたように感じます。いつものことですけど、気力が下がったとしても、ちょっと待っていればまた描きたくなるんです。ただ、最近はその振れ幅が小さくなってきているようには感じますね。

—— 待っていればまた描きたくなるのは、ご自分でわかっているんですね。

結局また描きたくなるじゃん!って、毎回なるので(笑)。そういった経験を何度も繰り返して、ようやく分かるようになったからなのか、最近は大きく落ち込むことはなくなりましたね。ちょっと休憩タイムみたいな感じで待つことにしています。

一年くらい前からヨガを習い始めたんですけど、制作意欲が下がって暇になったら、ヨガの方に意識を向けて、身体を動かしたり、瞑想したりして過ごして、また気力が上がってくるのを待ったり。

—— ヨガを!日常や生活もそうですが、やっぱり人間に興味があるんですね。

そうですね。今はとくに自分への興味が強い気がします。今更ですけど、自分のことをもっと知りたいという気持ちが強いです。

ヨガの考え方で、人の身体のことを「宇宙」って呼ぶことがあるそうで、宇宙って今だに分かっていないことばっかりじゃないですか。人間の身体もまさにそうで、知らないことばかりなんです、自分の身体なのに。

自分のことを知るためにも、もっと自分に正直になるというか、今の自分ってどんな気分なの?って常に耳を傾けてあげて、自分がやりたいこと、したいことを優先してあげられたらなと。そういう生き方をしていけば、もっと自分について分かるのかなって。

—— そういったことを意識されるようになってから、なにか変わりましたか?

改めて、自分ってこういう人間なんだなって知った気がします(笑)。なんとなく前から気づいていたけど、ちゃんと認めていなかったというか、見て見ぬふりをしてきたというか、そういう自分を発見した感じです。

もちろん、今でも認めたくないことはいっぱいあるんですけど、私ってそんなもんじゃん!って(笑)。認めてこれなかった部分も好きになれたら、本当に無敵だなとは思うんですけど。まだまだ、他人にこう見られたいとか、そういう欲は出てくるので、もっと自分を楽にしてあげたいなって思います。

そうしたら、もうちょっと強くなれると思うし、自分の体験を漫画やイラストを通して伝えることで、誰かの役に立てるかもしれない。エッセイ漫画って、そういうところがいいですよね。同じように悩んでいる人が私以外にもいたんだって!そうやって誰かの力になれるって、素敵ですよね。

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基本はビビリ、だからこそ経験することで自信につなげたい

—— 今後こういったことをやっていきたい、こういった分野の知識を学びたいなど、ありますか?

絵本でいえば、今の常識という枠から一歩はみ出したような人たちが登場する絵本を作りたいと思っています。それを通して、世界って広くて、いろんな人がいるんだよって伝えていきたいなと。

今年やろうとしているのが、友人と一緒にグッズを作ること。私が布のデザインをして、友人がそれをポーチやバッグなどのグッズにしていくという、そんな取り組みを進めています。

あとは、いろんな挑戦をしていきたいと思っています。たまに、ご依頼をいただいたことに対して、私なんかでいいのかなって、ちょっと躊躇(ちゅうちょ)してしまうこともあるんですけど、声をかけていただいたということは、そういう流れが来ているから乗っかってもいいんだ!って考えるようにして、どんどん新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。

—— いろんなことに挑戦されたい。三輪さんらしいですね!

大きい枠としてはイラスト、絵を描くことにはなりますけど、ジャンル問わず、できる限りのことはやってみたいですね。

私って、基本ビビリなんですよ(笑)。人見知り、場所見知り... あと心配性なので、経験を積むことで、それが自信につながっていってくれたらいいなって思っています。何でも初めは緊張すると思うんですけど、やってしまえば、その後の自分のレベルはちょっとは上がってると思うので。いろんな経験を重ねていきたいですね。

—— 単身でニューヨークへ渡ったり、学びたい欲求を素直に行動に移したり、活動的でとても正直な三輪さんのお話は、聞いているこちら側も何か新しいことに挑戦したくなってしまうくらい、プラスのパワーに満ち満ちていました!本日はありがとうございました!

文:mecelo編集部 / 写真:林 直幸

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Icon三輪夏生

イラストレーター、アーティスト