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“偶然” を楽しむ私が表現したいのは、「自分で描いているけど、自分では描いていない絵」【後編】

鮮やかな色が目を引く植物を描く坂口香南子さん。インタビュー後編では、ずっと苦手だと思い込んでいた「タイトル付け」から得られたという気づき、そして今後のチャレンジについてお話しいただきます。

言葉を用いることで、自身の考えがよりクリアになった

—— 事前に何を描くのかを決めないことが多いそうですが、作品のタイトルはどのように付けているんですか?

もともと言葉や文章を考えることが苦手なのと、自由に見てもらいたい気持ちもあって、これまでイベントでは、作品タイトルは付けてきませんでした。でもあるイベントで、ギャラリーの方から「タイトルはあった方が見やすい」とアドバイスをいただきまして。

見る側からすると、タイトルが付いている方が、絵の世界に入って行きやすいし、タイトルはこうだけど、こうも見えるよねって、作家さんとお話するきっかけにもなるんだと。

そのアドバイスをいただいた翌日からタイトルを追加したところ、本当にお客さんとお話するきっかけになってくれて、その次の日にはなんと、タイトルが後押しとなって、絵が売れたんです。

—— タイトルが、お客さんの心を動かすきっかけになったんですね!

今年の9〜10月にかけて開催した「センス・オブ・ワンダー」という3人展は、作品と一緒に200文字の文章も発表するというスタイルの展示でした。

最初は、一文字も言葉が浮かんでこなくて、「もう、どうしよう...」ってなっていたんですが、だんだんと文章ができ上がっていくにつれて、自分の考えや想いが整理され、それによって絵が描きやすくなったんです。これをきっかけに、「文章っていいな」って思うようになりましたね(笑)。

—— その「3人展」では、どのようなことを文章にされたんですか?

展示のテーマが「Sense of wonder(センス・オブ・ワンダー)」で、これには神秘さや不思議なことを見る(に気づく)感性という意味があります。同じように目の前の景色を見ているはずなのに、子どもには大人には見えない、気づけないものを感じる力があるよねって、そういった「感覚」がテーマでした。

私は、自分の描いた植物が、何を見て、どのように感じているのか。日々を楽しんでいるのだろうか?なんてことを想像しながら文章を作っていきました。

“大好きな植物たちの住む世界に、思いを馳せる” 、それを想像して文字に起こしたことで、すごく絵が描きやすくなりましたね。

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—— 言葉にして、明快にしたことで、より絵が描きやすくなったんですね。

そうなんです。これまで、テーマを絞ってしまうと、逆に描きにくくなるのではないかと心配していたのですが、今回の経験から、ある程度の枠を定めることで、より見やすく、より伝わりやすくなることを知り、すごく勉強になりました。

—— 枠やテーマを事前に定めてしまうことで、坂口さんの良さでもある「偶発性」がなくなってしまうことはないんですか?

それはないと思います。描く方法を変えることはないですし、テーマが決まっていたとしても、こういう絵を描くぞという具体的なイメージをもちながら描くことはないので。

これまで通り、細かいことは決めずに、偶然に任せながら描くスタイルは変わらないと思います。

坂口香南子さんの作品

絵本・包装紙・テキスタイル... いろんなものへ展開させたい

—— 今後どんなことにチャレンジしたいと考えていますか?

まずは、絵本を作りたいです。あとは、パッケージや包装紙、ステーショナリー、テキスタイルなど、いろんなものに自分の絵を展開していきたいです。

—— 絵本は、ストーリー構成など、事前の計画が大切なものだと思うのですが、偶然が好きな坂口さんとしては、どんな絵本をイメージされているんですか?

これについては、アートスクールの体験入学でのできごとが、すごく印象的だったのですが。

体験入学では、先生から「好きな形を6つ自由に描いて、それに色を塗ってください」といわれ、本当に自由に、好きなように6つの絵を描きました。そうしたら次は、「その6つの絵を適当な順番に並べてください」と言われて。言われたとおり、適当に並び替えた絵の束をスクールに預けて、その日は帰りました。

後日、スクールへ行くと、先生が私の絵の束を製本してくださっていて、なおかつ、即興でストーリーを付けてくださっていて。『おはよう』というタイトルの絵本でした。

絵も、並べた順番も、後のことなど何も考えず、本当に適当にやったものだったのに、先生はそれに上手くストーリーをつけて、絵本にしてしまったんです。これには、驚くとともに感動しましたね。

—— ランダムに並べた絵が、絵本になって返ってきた。これは面白い体験でしたね!

そうなんです。この体験をきっかけに、ストーリーがしっかりと決まっているものより、もっと感覚的な、“絵を楽しむ絵本” をつくりたいなと考えるようになりました。

振り返ってみれば、私自身、絵本を見るときって「読む」ことより「見る」ことばかりしているなと(笑)。「見ること」を楽しめる、“自分なりの絵本” を作っていきたいですね。

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—— パッケージやテキスタイルにも展開していきたいとのことですが。

はい。実は今、たまにワークショップを開催させていただいているんですが、その中で「紙袋をつくる」というテーマの回がありました。そのときに、いつもの絵をパッケージや立体的なものに作り変えるだけで、平面の絵を見ているときとはまた違った “見え方の変化” があって、すごく面白いなと感じたんです。

もともとパッケージデザインには憧れがあって、就活のときにデザイン会社に応募したこともありました。残念ながらご縁はありませんでしたが、そのときの夢が今でも残っているのかもしれません(笑)。

—— ワークショップ、とても楽しそうですね!いつ頃から始められたんですか?

今年の夏からです。実は、昨日も開催しまして、これまでに4回ほど開催させていただきました。

—— 紙袋づくり以外では、どのような内容があるのでしょう?

これまで、モビールやサマーカード(暑中見舞いハガキ・カード)、蛇腹になっているカードなどをテーマに開催しました。

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—— そもそも、開催することになったきっかけは何だったんですか?

個展を開いたときに、会場の隣の空いたスペースを使って、何でも好きなことをやっていいよと言っていただいたことから、ワークショップを開催したのが最初のきっかけです。

当初はライブペインティングにしようかなとも考えたんですが、それはすでにやったことがあって、もっと新しいことにチャレンジしてみようということで、ワークショップに決めました。あと、ワークショップなら、来てくださった方が一緒になって楽しめるのがいいなと思ったんですよね。

—— もともと、教えることは得意だったんですか?

いいえ!人と話すことも苦手なので、自分にはワークショップは絶対にできないだろうって思い込んでいたんですけど、いざ当日を迎えてみると、皆さんすごく意欲的に参加してくださって、とてもスムーズに進めることができました。勇気を出して、チャレンジしてみて良かったって思いましたね。

初回は、お子さんが多かったのですが、皆さん発想が想定外なことだらけで(笑)。おかげで、すごく良い刺激をたくさんいただきました。ワークショップでは、参加される皆さんの多彩な考えや発想に出会えるので、毎回教えてもらうことが多くて楽しいですね。

—— ライブペインティングにワークショップと、作品発表以外のチャレンジもたくさんされていますが、他にもこんなことしてみたいというものはありますか?

音楽とコラボしたいです!まだ、大きな絵を描いたこともないので、音楽とコラボレーションしながらライブペインティングしてみたいです。

—— 時間の貴重さを実感されたことを機に、ご自身の好きなことに挑戦し、取り組まれている坂口さん。大好きなことを実践しているからこその、生き生きとした表情がとても印象的でした。本日はありがとうございました!

文:mecelo編集部 / 写真:笹木 祐美

坂口香南子さんインタビュー 前編はこちら

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