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自然が教えてくれる「感動」をたくさんの人に広めていきたい ー 細い筆に込めた熱き想いとは【後編】

細い筆で描かれた繊細な植物・動物と温かみのある優しげな色合いが印象的な作品を描く さかいりょうへいさん。後編では、さかいさんの描く世界について、そのコンセプトやテーマなど、根底に秘められた熱い想いを語っていただきます!

自分の心が動くことで、作品が生まれる

—— 現在は、どのようなコンセプトで描いているんですか?

そのときどきの、自分の日常や旅、人との出会いや本や映画から得られたメッセージ的なものだったり、印象に残ったことなどをテーマに作品づくりをしています。コンセプトでいえば、“日常生活の中から得られるもの” ですね。

また、最近とくに好んで描くテーマは「自然」です。僕は多摩ニュータウンで育ったんですが、比較的たくさんの緑に囲まれた、あの街 特有の、“ない所にもある自然” 、という環境の中で育ったことが、現在のコンセプトや作品につながっていると思っています。

—— 「自然」をテーマに、どのような絵を描いているんですか?

最近だと、「人の暮らしと自然との関わり」とか、自然からのメッセージではないですけど、「自然は僕らのことをどう考えているのか」とか、そういうことを考えながら描くことが多いです。

たとえば、山が水をろ過してくれることで、水は私たちが飲めるきれいな水になります。ろ過される前の水は雨で、その雨は海の水が蒸発することによって雲になり、その雲が風に運ばれて山や大地に雨を降らせる。水をろ過するためには、その雨を受け止めてくれる木の葉や土の存在が必要不可欠なのですが、その葉っぱもまた木に生い茂るためには、水が必要であったり。

そういった「自然のサイクル」や「生命の循環」というものに改めて気づかされると、「そうだったのか!」って、ちょっと感動するんですよね。そういう表立っては話されないけれど、でも当たり前のように僕らの暮らしを支えてくれていることって、ついつい忘れがちになっちゃうじゃないですか。

なので、自分がちょっとでも感動したこととか、気づかされたこととか、忘れないうちに描いておきたいって、そんな想いから、最近は描いています。

—— 当たり前過ぎて、見過ごしてしまっているようなことを描き残しておきたいと。

そうですね。忘れがちだなと思うことって、案外大切なことだったりすることって多いじゃないですか。また、それらを知ることで感動させられることもありますし。

そういう意味では、日常生活から得られる「感動」が、僕の描く原動力になっているのかもしれないですね。自分の心が動くことで、作品が生まれる。

人との出会いや対話から生まれる感動、自然に触れる、自然から学ぶことで生まれる感動。そういう日々の「感動」を絵にしていきたいんだなと、今あらためて感じます。

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自分が “グッ” とくる瞬間を、いかにたくさん作れるか

—— 作品のサイズについては、比較的小さいめのものが多い印象ですが、大きさへのこだわりがあるのでしょうか?

僕の絵では、メインとなるモチーフはすべて “3/0号” というすごく細い筆だけを使って描いています。この細い筆で、細い線を何度も引きながら描いていくんです。

なぜ画面サイズが小さいのかというと、このすごく細い線しか描けない筆で、大きな作品を描くにはかなりの時間を要することになるので、それでなかなか大きな絵にチャレンジできていないんです。理想をいえば、大きな絵ばかり描いていたいんですけどね(笑)。

—— いつ頃から、細い筆で描くようになったんですか?

絵を描き始めた頃からです。専門学校に入った時点で、細い筆はよく使っていました。

僕の中でひとつこだわりがあって、絵を描いているときに、自分が “グッ” とくる瞬間をいかにたくさん作れるか、これをすごく大事にしています。僕の場合は、特に細い筆で細い線をスッと引くときに、グッとくるんですよ(笑)。だから、常に細い筆をつかって絵を描くことにしているんです。

昔は、葉っぱや枝を、太めの筆でまとめてササッと描いていたときもありましたけど、最近は、一枚一枚、一本一本、ひとつひとつを、細い筆をつかって丁寧に描いています。

—— 細い線を引くと “グッ” とくるということですが、具体的にはどんなところに感動するんですか?

何にグッとくるのかは、自分でもよくわかっていないです(笑)。

ただ、細い筆のエピソードとして、学校の美術の時間に、当時好きだった女の子から、「さかいくんには、この筆が合いそうだからあげるよ」って、すごく細い筆をもらったことがありました。当時から細い線ばかり描いていたのか、今では思い出せないんですけど、すごく細い筆をもらった記憶だけは今でも鮮明に残っていますね。

実際、細い線を引くとグッとくるので、彼女が言うように、僕には細い線が合っているんだと思います(笑)。

さかいりょうへいさんの作品

絵を通して、自然に興味をもってくれる人が増えたらいい

—— 昔は、葉や枝をまとめて描いていたのが、今では一枚一枚ひとつずつ描いているとのことですが、なぜ描き方が変化したのでしょう?

太めの筆でまとめて描いていた頃から、実はもっと細かく描きたいとは思っていました。

実際の木を見れば、細かい枝がびっしりと生えていたり、色の違う葉っぱが幾重にも重なり合って、絶妙な緑色をつくっていたり、葉っぱもよくよく見れば無数の葉脈が張り巡らされていたり、いろんなことが見えてくるじゃないですか。

それらをきちんと描いてみたいという思いは、ずっとありました。

—— もっとリアルに表現したいということですか?

リアルとはちょっと違います。かっこよく言っちゃうと、描いた木や葉っぱに「命を吹き込みたい」んです(笑)。自然に対する敬意といいますか。要は、絵に説得力を持たせたいんですよね。

—— 「命を吹き込む」「説得力をもたせる」、もう少し具体的に教えていただけますか?

そういう気持ちで描き上げた絵を見ると、自然を見つめたときに感じるのと似た感覚を得ることがあって。

自然って、見れば癒されるじゃないですか。

なので、僕の絵を見て同じ感覚になっていただければ嬉しいですし、そうでなくとも、例えば気に入っていただいた絵に描いてある植物に、街や自然の中で出会うきっかけになってくれたらそれもまた嬉しいです。「あっ、あの絵に描いてあったやつだ」といった感じで。

—— さかいさんの絵を通して、自然に興味をもってくれる人が増えたらいいなと。

そうですね。

僕自身、何気なく生活しているときだったり、それこそ資料として見ていた写真や図鑑からふと知り感動する、ということが結構あって。感動をおぼえると、それに対する興味が一気にわくんですね。

そんな風に、今まで知らなかったことやものに対して感動して、興味を持ってもらうきっかけを提供できたらいいなって思っています。

—— 日常の感動を広げていきたい、そんな想いを感じますね。

最近、よく「自然」をテーマに描く理由って、つまるところは、そういうことなのかなって思いますね。

人が自然に対して、もっと興味や関心を持つようになれば、世の中上手く行くことっていっぱいあるんじゃないのかなって、そんなことをよく考えていた時期があって。

ゴミの問題にしろ、温暖化や自然破壊にしろ、自分たち人間が、自分たちの文明の進化のために、自然に対してよくない変化を起こしてしまっているのであれば、それこそもっと自然に意識を向けることが大切なんじゃないかって思うんです。一人一人それぞれが意識するだけでも、全然変わってくる、そう思っているので。

そんなことを考えていたのが3年くらい前で、それ以降は、そんなきっかけになってくれればという想いを込めながら描いてきているように思いますね。

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感情をそのまま画面にぶつけたような、自分本位な絵も描いていきたい

—— 今後はどんなことに挑戦していきたいですか?

もっと自分の発表の場、活動の場を広げたいというのが第一にあります。海外へも行きたいですし、日本の中でさえ、まだ行ったことのない場所ばかりなので。いろんな場所を訪れては、自分の作品を発表して、人と出会い、つながりを広めていきたいです。

具体的にやりたいこととしては、絵本制作と本の装画。あとは、もっと長い時間をかけて、個展や展示に向けての制作をしてみたいです。そして、大きい絵の制作も!

—— ひとつずつ詳しく聞いてみたいのですが、まずはなぜ、絵本制作なのでしょう?

専門学校の頃から「絵本」にはすごく興味を持っていました。と言いつつ、まだ着手できていないんですけど。でも絵本に関しては、ずっと作りたいと思い続けています。

—— どんなテーマやストーリーの絵本をイメージされているんですか?

昔働いていたアルバイト先が、ずっとパン屋さんだったんです。お店は替えつつも、ずっとパン屋さんで、結局10年以上パン屋さんで働いていました。

パン屋さんを辞めてからも、パン屋さんで個展を開催したり、パン屋さんのカレンダーの仕事をいただいたり。もともとパンが好きなこともあるんですけど、パンとは何かとご縁があるなと思っていて。なので、パンの絵本を作りたいんです。

ただ昨今は “パンブーム” なので、そこにのっかった感じにはなりたくないなとは思っているんですけどね(笑)。

—— 本の装画についてはいかがですか?

昔から本を読むのが大好きなんですけど、僕が本を選ぶときって、ジャケ買いならぬ “装丁買い” をすることがよくあって、それをきっかけに出会った素晴らしい本がたくさんあります。すごいことに、“装丁買い” してハズレを引いたことはあまりないんですよ。

本屋さんに行って、この装丁いいなって思って買ったら、今ちょうど僕が読むべき本だったということが多くて。だから、僕もそんな装画を描きたいと思っているんです。その人にとって、ちょうどいいタイミングでその本と出会えるように、そのときにハッと気づいてもらえるような装画を。

—— 絵にピンときたら、内容にもピンときたということですね。それは面白いですね。

そうなんですよ。でも “装丁買い” って、実は皆さんけっこうやっているんじゃないかなって思っていて。自分の直感を信じる!じゃないですけど、感覚を重視した決め方。なんかいいですよね。

—— 本はどんなジャンルがお好きなんですか?

小説が好きです。いしいしんじさん、重松清さん、西加奈子さん、エンリケ・バリオスさんとか。わりと幅広く読むほうなので、ジャンルはバラバラですけど。

—— 3つ目に挙げられた “長い時間をかけて、展示に向けての制作をしたい” ですが、こちらはどういうことでしょうか?

最近の絵は、自分が好き放題に描いているというよりは、“相手” を意識して描いていることが多いんです。たとえば個展であれば、観に来てくださる方を意識して、こう描いたらクスッとしてもらえるかなとか、キレイだなって思ってもらえるかなとか、絵の先にいる人のことを想いながら描いているところがあって。

相手のことを想いながら描くことはとても大切なことですが、もっとこう、自分本位に描くことがだんだんと無くなってきている気がしていて。だからこそ、自分の感情をそのまま画面にぶつけたような、そんな絵を描きたいと思っているんです。自分だけに焦点をあて、ひたすら自分に向き合って描く絵、それを描くための時間を作れるようになりたいなと。

—— それは、時間があれば描けるものなんですか?

描けると思います。実は、以前に似たようなことをやったことがあって。そのときは、とある展示のために二週間ほど山にこもって、展示で飾る絵だけをひたすらに描きました。

そのときの “集中できる環境” や “自分と向き合い続ける環境” が素晴らしく良かったんですね。山の中という場所も良かったんだと思いますけど。たぶん、今またそれをやりたいんだと思います。

何も考えずに手を動かし、想いのままに描き続ける。そうやってでき上がった “僕の絵” がいったいどんなものになるのか、見てみたいんですよね。

—— 繊細なタッチと優しい色合いが織りなす、さかいさんの描く温かな世界の根底には「自然に対して、もっと知って欲しい」という さかいさんの熱い想いが込められていました。描くことで「感動」を伝えたい ー さかいさんの今後の活躍を楽しみにしています!本日はありがとうございました!

文:mecelo編集部 / 写真:Kana Tarumi

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