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「作家」が作品を発表する人を指すのであれば、私は一生描き、そして発表し続けたい【後編】

自ら絵画教室を運営しながら、抽象画家としても活動されている島村由希さん。後編では、島村さんご自身が感じている「抽象画」の魅力、描くときの心構え、そして運営されている絵画教室や今後のチャレンジについてお話しいただきます。

抽象画の魅力は、制約に縛られない自由さ

—— 抽象画をメインに描いていますが、いつ頃から現在のスタイルになったんですか?

高校の終わりの頃からだと思います。絵画教室の先生が、油彩で抽象画を描いている方で、抽象画がとても身近にあったことと、先生の描く作品がとてもかっこよかったので、自然と自分もそちらに進んでいった感じですね。心から楽めるものを探していたら、それが「抽象画」だったということです。

—— 島村さんにとって、抽象画にはどんな魅力があるのでしょう?

実存するものでなければならないという制約に縛られることなく、絵画としての色と形の関わりをどこまでも追求できて、表現できることが面白いところですね。

あと、私はいろんなことを自由にやりたい人間で、扱う素材にしても、絵の具に粘土や砂などの異素材を混ぜてみたり、異なる種類のオイルを複数混ぜたりすることで、絵の具の質感を変化させて楽しんでいます。

風景画でこのように遊び過ぎてしまうと、変に質感だけが悪目立ちしてしまって、風景を風景として捉えることが難しくなることもあるんですが、抽象画であれば、そういったことをあまり気にすることなく、とことん楽しめるのかなと思っています。

もちろん、抽象画にも大変なところはあって。制約がないことや上手い下手が分かりづらいことというのは、私は魅力に感じる一方、制作の難易度を上げるものでもあると思います。大変なところではあるけれども、だからこそのやりがいもあるのかなと思いますね。

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媚びる気持ちは、必ず作品に表れてくる

—— ご自身の感情に対して、とても真っ直ぐな方だなと感じたのですが、そんな島村さんでも、他人の目が気になったり、作品がどう受け入れられるのか、不安を感じることはあるんですか?

そういった理由で不安になることはあまりないですね。

自分でも「この絵はよくないな」って思うときって、つい上手く見せたい、格好よく見せたいって思いながら描いてしまったときなんですよ。そういうときは、自分で見ても、なんだかわざとらしい、薄っぺらな作品だなと感じますね。

今後もたくさんの方に見てもらいたい気持ちはすごくありますし、個展は見てくださる方ありきのものだといつも思っています。でもだからといって、その人たちに買ってもらえる作品をつくろうって、ちょっと媚びた考え方になってしまうのは良くないと思っています。

—— そういった「媚」みたいなものは、作品に現れてくるものなのでしょうか?

自分ではすごく出ているように思います。他の人から見たらどうなのかは分かんないですけど、完成した作品を自分で見ていて「格好つけてるな」って思うと、すごくうんざりしちゃいますね(笑)。

—— そういう時はどういう風に気分を転換されるんですか?

絵からちょっと離れて、おいしいもの食べたりとか、他の作品を描いたりとかします。あとは、抽象画って上下左右があんまり関係ないものなので、たまにぐるっとひっくり返して新しい形を探してみたりとかもしますね。

島村由希さんの作品

描くことより、見ることの方により意識をおく

—— 制作途中に、作品の天地をひっくり返してみることもあるとのことですが、スタート時にテーマやコンセプトを決めることはないんですか?

先に考えることはないですね。完成図やこういうイメージ作りたいというものが一切ない状態から、描き始めます。

“何かを描く” というより、最初はキャンバスの上で “絵の具遊び” をするような感覚ですね。小さな子どもが泥遊びをするような感覚で、はっきりとした目的はなく、まずは遊びながらこねくり回して、それを繰り返していく。繰り返していく中で、ふとした瞬間に面白い色や形がパッと浮かんでくる瞬間があるんです。そのイメージをいかに逃さず掴めるかどうかが勝負というか、掴めるか否かが作品になるか、ならないかの分かれ目なのかなと思いますね。

あとは、描こうと思えばどこまででも描けてしまうので、描くことを「止める」タイミングというのもけっこう重要で、それを逃して描き過ぎてしまうことで、作品が悪くなってしまうこともよくあります。

—— 止めるタイミングというのは、どのように分かるものなんですか?

制作中に「ここで止めるべきだな」と分かることはほとんどありません。なので、ある程度描いて、一旦休憩しようと思ったときには、必ず絵を廊下などの “見える場所” で乾燥させます。家事や創作以外のことをしていても目に入るようにすることで、客観的に見たらどうかな?って、描いているときとはまた別の感覚で見ることができるので、この方法をよく取ります。

パッと見た時に「この作品はちょっといいかもしれない」って感じたら、とりあえず、それ以上は描かないようにします。その後、本当にこれで完成で良いかどうかを見極める、考える時間をとって、そこで最終的に(完成かどうかを)決めます。考えてみれば、描くことよりも、見ることの方にすごく意識を使っていますね。

あと、自分は長い時間その作品を見つづけているので、目が慣れてしまうんですね。それで、どんどん判断がしづらくなっていってしまうことも多いので、そういう時は主人に見てもらって、コメントしてもらいます。

—— 客観的な視点を入れるということですね?

はい。でもそれだけではなくて、主人には “売れる作品が事前にわかる” という特殊能力があるんですよ(笑)。会場に搬入する作品を部屋に並べていると、これとこれは売れるねって。今のところはすべて当たっているので、主人のアドバイスには絶大な信頼をおいていますね。

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見る人の想像力を邪魔しないタイトルを

—— コンセプトやテーマを事前に決めて描くことは少ないそうですが、タイトルはいつどんなタイミングで付けられているんですか?

タイトルは一番最後に付けます。作品として完成した後で客観的に見て、例えばその絵が何かの風景に見えたりとか、こういう感覚に近いものがあるとか、そういった取っ掛かりからタイトルを考え始めることが多いですね。

特に抽象画の場合、タイトルがないと見る人にとっては何の足がかりもなくなってしまうので、絵を見ていただくための取っ掛かりとして、タイトルを付けているところはあります。

でも本音を言ってしまえば、作家が作品について説明できることより、見た方の感覚に触れるものがひとつでもあれば、私はそれが一番だと思っているので、見る人の想像力を邪魔しない程度のタイトルになるようには気をつけています。

—— もうタイトルなんて付けなくて、「無題」でいいじゃないかと?(笑)

「無題」はまたちょっと違う気がするんですよね、難しいところですが(笑)。私の作品の場合、「無題」ではちょっと違うというか、少し意味深な一言が付けてある方が、より分かりやすい、より取っつきやすくなるような気がしているので、今は何かしらのタイトルは付けたいと思っています。

そうやって頑張って考えても、タイトルやキャプションをまったく見ないという方もけっこういらっしゃって。そういう方を見ると、「私と同じ感覚なんだな」って、勝手に親近感を持ってしまいますね(笑)。事前にテーマやコンセプトのことは考えずに、純粋に絵だけを楽しむ。描いている時の私の感覚と近いのかなって、そうであればすごく嬉しいですね。

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楽しさを忘れずに描き続けることが、一番の目標

—— 創作活動と並行して、絵画教室も運営されています。どんな生徒さんが多いんですか?

生徒さんの割合でいうと、今は小学生ぐらいのお子さんが多いので、技術やノウハウといったこともよりも、まずは楽しんで描いてもらうことを考えています。やっぱり嫌いなことって、やりたくないし、できないじゃないですか。

私もアートや描くことが嫌いだったら、こんなに手間のかかる大変な仕事は絶対にやっていないと思います(笑)。楽しいと思えれば、どこまで頑張れるし続けられると思っているので、子どもたちには早くからその感覚に触れてもらいたいなと思っています。よい経験にもなりますし、必ず財産になると思っています。

—— 先生ご自身が、すごく楽しみながら運営されているのが伝わってきて、すごくいいなと思いました。そもそも、人に教えることは好きだったんですか?

教えることが好き!と意識したことはなかったんですけど、いざ働いてみたら、すごくやりがいを感じられるし、すごく楽しいので、やっぱり好きなことなのかもしれませんね(笑)。

でも、教えているはずなのに、逆に学ばせてもらうこともすごく多いですね。絵のことでいえば、子どもがささっと描いた落書きみたいな絵の中に、この構図はピカイチだなって思うものがあったりするんですよ。

子どもが何かを描くときって、描いている対象しか見ていないことが多いので、画用紙のこの位置にこの大きさでこの絵を描くの!?っていう、衝撃的な経験は何度もありますね。生徒さんを見ているだけでも、「みんなも絵を頑張ってるから、私も頑張らなきゃ」って、創作意欲が湧いてきます。

—— 最後に、今後やっていきたい事やチャレンジしたい事について教えてください。

これからも、楽しさを忘れずに描き続けるというのが、私の一番の目標というか、できれば一生描き続けたいと思っているので、気持ちを折ることなく、このままずっと続けていくことですね。

一作品一作品、真面目に取り組んでいくことで、作品も私自身も成長していくと思いますし、成長することで、今の私ができること以上のことができるようになっていたいという想いがすごくあります。

これは制作における目標ですが、発表に関する目標は、引き続き積極的に発表し続けていくことですね。やっぱり自らから発信していかないと、出会いは訪れませんから。

ひたすら描き続けること、積極的に発表し続けていくこと、この2つを楽しみながらやり続けていくことだと思っています。

—— いつでもご自身の気持ちに正直に、そして真っ直ぐに向き合うことで “好きなことで生きる” 人生をつかんだ島村さん。苦労された経験も、ニコニコと楽しそうにお話される彼女からは、ポジティブ・オーラが溢れていました!本日はありがとうございました!

文:mecelo編集部 / 写真:関戸香織

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Icon島村由希

画家