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100%好きな絵を描くことで無敵になれる ー 友人が気づかせてくれた“素直になること”の大切さ【後編】

ファンタジックで可愛らしい表現を得意とするタテヤマフユコさん。後編では、タテヤマさんの「意識の源」であるインプットについて、そして魅力的な作品世界の隠れたエピソードについて、詳しくお話しいただきます。

自分の好きなものって、やっぱり絵にでてくると思う

—— これだけのものを日々アウトプットできることがすごいなと思っているんですが、タテヤマさんはどんな「インプット」をされているんですか?

ひとつは、旅行です。旅先の知らない土地って、そこに住んでいる人たちにとっては見慣れた日常ですけど、私にとってはすべてが非日常です。だからこそ、いろんなものが目に入ってくるんですね。いつもは気づかないような些細なことに視線が向いたり、逆にすごく印象的なことに出会ったり、そういった経験が記憶に残って、新たな私の絵のモチーフになっていくんだと思います。

—— 旅先で得た気づきや刺激の数々が、タテヤマさんの絵を形づくっているんですね。旅行では、どんなところに行くのが好きなんですか?

国内も海外もどちらも好きです。どちらかといえば、人々の生活を肌で感じられるような場所が好きですね。生活感のある、ガヤガヤしたところの方がいいです。

—— 旅行以外では?

あとは、本を読んだり、映画を観たり。博物館や美術館にもよく行きます。

—— 本や映画は、どんなものが好きなんですか?

本では、ジュール・ヴェルヌの『海底2万マイル』やウィリアム・モリスの『ユートピアだより』とか、わりと古いものが好きです。

—— なかなか渋い選択ですね。映画も古いものが好き?

そうですね。キューブリック作品がすごく好きで、中でも『2001年宇宙の旅』が一番好きな作品です。

—— 未知なる場所、未来、宇宙... 非現実的なテーマが多いですね。こうして並べると、タテヤマさんの作品が幻想的なのもよく分かる気がします(笑)。

やっぱり好きなものは、自然と絵に出てきちゃいますよね(笑)。

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絵であっても、“命ある生きもの” として表現したい

—— ご自身の「意識」を表現しているという作品について、具体的に伺ってみたいのですが、台湾で展示された「犬がみた夢」はどんな絵なのでしょう?

これは、年老いた犬が見ている夢の中を描いた作品です。年老いた犬が好きだった枝や、よくかじっていた骨やボール、よく食べていたドッグフードなどがランダムに配置されていて、それを年老いた犬の精神世界の住人である小さい犬たちが見つめています。夢とは言っていますが、だんだんと意識が遠のいていく犬の内面を表現している絵でもあります。

死期が近づいてきている犬ですが、夜空には彼の次の魂(命)である流れ星がさんさんと輝いていて、生と死が共存している、そんなシーンです。

—— “終わりは次の始まり” という言葉がよく似合う絵ですね。タテヤマさんは犬を飼ってるんですか?

犬ではなく、猫を2匹飼っています(笑)。でも、昔から犬は好きで、いとこや友だちが飼っている犬とよく遊んでいました。

—— 犬つながりで(笑)、台湾展示のメインビジュアルにもなっていた「アニマルワンダーランド」には、どんなストーリーがあるのでしょう?

青い大きな犬がいるんですけど、この犬から世界が誕生したという設定です。その犬がヨダレを垂らすと、そこに池ができて。池の水を養分にして植物が育ち実がなって、その実を食べにきた動物たちが、いつのまにか池のまわりに住みついている。そんなにぎやかなシーンを描きました。

大きな犬が、みんなの「命の源」をつくっている。そして、そんな犬のまわりに自然と他の動植物たちが集まってきて、みな一緒に暮らしている、そんな場面ですね。

—— 天地創造のようなストーリーですね。

まさに、そんな感じです。

—— 「犬がみた夢」「アニマルワンダーランド」では、どちらも背景に「命」の存在が見てとれます。タテヤマさんの中で、生命や命に対する特別な思いがあるのでしょうか?

生きているものが好きで、それらをモチーフとして表現するとなると、それらの「生や死」について、やはり考えざるを得なくなります。

生きものはいずれ死んでしまいますが、「命」はこの星が生まれてからずっと、進化しながらも続いています。私が描く “絵の生きもの” たちも、いずれは死にゆく「命ある生きもの」として表現していきたいと思っているんです。

—— 絵はもちろんのこと、タテヤマさんが日々考えていることや創作の背景となっているストーリーがとても魅力的だなと感じました。

ありがとうございます。実は文章を書くことにも興味があって、今後は自分の描いた絵を自分なりに分析して、「どんな想いで描いたのか」「どんなことを伝えたくて描いたのか」、自分の気持ちをもっと言葉でも表現していきたいと考えています。

タテヤマフユコさんの作品

いろんな “考え” と出会えるから、展示って面白い

—— 生きていれば、調子のいいときばかりではないじゃないですか。落ち込んでいるとき、苛立っているとき、そういうネガティブなときの頭の中も描くんですか?

基本的に、描きたいものはポジティブな想いが多いです。なので、私の場合は辛さとか苦しみとか、そういったネガティブなものは、描くモチベーションにあまり繋がらないんです。

—— 辛いなーとか、大変だなーって思っているときは、そもそも描かない?

そうですね。描いていないと思います。

“結局、うまく行くだろう” 、そう物ごとを捉えているところがあるので、落ち込むことはあっても、ずるずると長く引きずることはありません。上手く気持ちを切り替えて、描けていると思います。

—— イラストレーションを学んだ理由として、相手からの反応があって、それを受けてまた作っていくことが面白いと言っていました。展示を経験されて、お客さんの反応はいかがでしたか?

私の中では、正直あまり上手くいかなかったなって思っていた絵に対して、「私はこの絵が好き」って言ってくださる方がいて。自分では気づけなかった作品の魅力に気づいてもらえたみたいで、すごく嬉しかったですね。自分とは違った感覚、視点、ものの見方を知ることができるので、展示ってすごくいいなと思っています。

—— 相手の「反応」って、さまざまだと思いますが、タテヤマさんはどんな反応でも受けていきたいと思いますか?

そうですね。今描いている絵は、私が100%好きなものしか描いていないので、たとえ他の人からよくない評価をされたとしても、「自分はこの絵が好きだから、(ネガティブな評価がきたとしても)これでいいんだ!」って、思っちゃいますね。

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苦しい時期を乗り越えたからこそ、今の私がある

—— なるほど。自分のことや自分が生み出したことに対して自信を持てる方って、けっこう少ないと思うんですけど、タテヤマさんは、なぜそのように強くいられるのでしょう?

好きなものを描いているときって、すごく気分がいいんです。“本当に好きなもの” を描くことで、精神的にも強くなれるというか、何をいわれても無敵になれる、そんな気がしています。

—— 割りと以前から、そういう風に考えられていたんですか?

小さい頃の感覚が、これに近いと思っていて。小さい頃は、何を描いてもいいし、逆に描かなくてもいい。そういう “純粋な感覚” が、友人へのウェルカムボード制作をきっかけに、だんだんと戻ってきているように感じています。

また、自分が大好きなものに対して、同じように「いいね!」って言ってくださる方がいることに気づいてからは、それも私の大きな力になっていますね。

—— ものごとをポジティブに捉えられることもそうですが、好きなものしか描かない姿勢を貫けることも、十分にすごいなと感心しています。

好きなものしか描かないと言っても、相手が伝えてくださった言葉は、自分の中にきちんと受け止めたいと思っています。やっぱり自分だけでは気づけないことも多いので、それに気づかせてくれる言葉や気持ちは大切にしていきたいです。

—— どうしたら、そのように広く視野を保ちながら、ご自身の好きを追求していくことができるんでしょう?

私の場合は、人物を描いていた時期があったからこそ、今自分は好きなものを好きなように描くことができるんだと思っています。

必死になって、苦手な人物とかインテリアとかいろんなモチーフを描いてきて、そのときは苦しかったけど、そのおかげで今描けるものの幅がすごく広がったと思っていて。

—— 苦しくも挑戦した期間があったからこそ、得意の幅も広がっていったと。

はい。正直 あの期間があってくれて、本当に良かったと今は思っています。それがなかったら、今描いている絵はもっと違うものになっていたと思うし、もしかしたら今だに好きではない絵を描き続けていたかもしれません。

今、自分が100%好きな絵を描けていられるのは、苦しい時期も目の前のことに向き合って、少しずつでも前に進めてきたからだと思っています。

—— 苦しい時期があったからこそ、今自分は好きな絵を好きなように描ける ー 作品のように柔らかな雰囲気をもつタテヤマさんから出てきた力強い言葉がとても印象的でした。これからも純粋な気持ちとともに、大好きな生きものたちを描き続けていただきたいです。本日はありがとうございました!

文・写真:mecelo編集部

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Iconタテヤマフユコ

画家・イラストレーター