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芸術は純粋なもの。絵でお金を得ることが後ろめたかった【後編】

後半では、むらせさんの絵の世界観や2枚の絵を同時に描く理由、育児を経て変わった画家活動への思いについてお話をお聞きしています。

画家になる覚悟、芸術を売る覚悟

—— 結婚・出産を経て、変わったことはありますか?

すごく変わりました。
以前は絵を描くのが好きだから、楽しいから描いていましたが今は、絵を描くことを職業にした覚悟があるので、楽しいだけでは描けないですね。

—— “画家になる覚悟”について、詳しく教えてください。

大学生の頃、私は“創作と利益を絡めてはいけない”と思い込んでいました。芸術は、純粋なものでなければいけないと。だから絵を描くことを職業にして、お金を得ることに後ろめたさを感じていたんです。

そう考えていたのは、自分のために絵を描いていたからかもしれません。でも今は、見てくださる方に心地良さを感じてもらったり、楽しんでもらったりすることは、その人たちにとっても有益なことだと思うんです。ギブアンドテイクであればお金をもらってもいい、そう思えるようになりました。

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—— そう思うきっかけは、どんなことがあったんですか?

画家という職業は、賞をもらうとか、権威ある人に認められるとか、自分以外の人から認められるものだと思っていました。

だからそういった経験がない私が、画家と名乗るのはおこがましい事のように思ってしまって。画家としての自信の無さが、そう思わせていたんだと思います。

その頃は、周りが何を言おうと「私は画家です」と胸を張れるほど自信が持てなくて、自信を持てない自分に遠慮していました。

そんな時に東日本大震災が起こって・・・私は名古屋にいましたが、災害の報道を見て「人生はいつ終わるのかわからない」という事実を目の当たりにしました。
人生の時間は限られていると知った時に、誰かに認めてもらうのを待っているのは時間は無駄だと気付いたんです。自分の理想に近づくために1日も無駄にできない。だから、行動を起こさなければいけないって。

それから「待つのではなく、やりたいことをやろう」と、やりたかった画家として活動することに決めたんです。

好きなものを描きたいから星やオオカミを描く

—— オオカミが描かれているものが多いですね。

オオカミが大好きなんです。
もともと子どもの頃から犬が大好きで、そこからオオカミに辿り着きましたね(笑)。

諸説ありますけど、オオカミは犬の原形で、生態系のトップに君臨する自然界の王様なんです。だから私にとっては、オオカミは自然の象徴ですね。自然のモチーフとして、描きたくなるんです。

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—— 絵本の世界では悪者として登場するオオカミですが、むらせさんにとっては優しいイメージですか?

オオカミは悪い動物じゃないですよ。生態系の上の方にいるので、強いから悪役に設定されてしまうんだと思います。オオカミは悪い動物じゃないです。

—— オオカミを含めて夜の絵が多いですね。

夜が好きというよりも星を見るのが好きだから、夜の絵を描いてしまうんだと思います。いつも星空を見ていたいんですよね。

私は家に飾りたい絵を描きたいので、私が眺めていたい星の絵が多くなっちゃうのかもしれないです。星の絵って心が落ち着きませんか?

見た人が心地よさを感じる絵って、私が心地よさを感じていないと描けないので、私が眺めていたいと思うものを描いています。そうするとそれに共感してもらえることがあるんです。それが嬉しくて、それを味わいたくて描いている部分もありますね。

—— 太陽の光が降り注いでいるような絵は描かないのですか?

昔は描いていたんですけど、最近は描いてないですね。今は星がある風景に惹かれています。
太陽が降り注ぐ絵も素敵ですが、きっと星が輝く夜空の絵に共感してくださる人がいると信じて描いています。

2枚同時に描いていく。絵と絵を競わせて見えてくるもの

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—— 一日どのくらいの時間を、製作時間として確保できていますか?

3時間くらいですね。何枚かを同時進行で描くので大きさにもよりますが、ひとつの絵が完成するまで時間がかかります。

—— 同時進行で描くんですか?

私は飽き性なところもあって、同じ絵ばかりをずっと描いていると飽きてしまう時があるんです。同時に2枚以上の絵を描くと、私にとっては箸休めみたいな感じになって、絵がどんどん変わっていくことで私の心も癒されていくんです。

それに1枚の絵では見えてこないものが、2枚の絵を並べて描くと見えてくるものがあります。だから、絵と絵を競わせるんです。もっとこっちの絵を描き込んだ方がいいとか、ここはやり過ぎだなとか。絵を見ていると呼ばれるんです。「そこ描いて」「そこはもういいよ」って。

—— 完成まで時間がかかりませんか?

そうなんです。だから自分の中で区切りをつけないと、完成できないんです。でもある程度すると、自分の中で「終わりだよ」って聞こえるんですよ。

—— 作品のテーマやコンセプトを教えてください。

テーマを伝えるのって難しいですね。上手く伝えられないのですが・・・コンセプトは「家に飾りたい絵」ですね。
見た人が心地よいと思う絵、心地よい空気を醸し出す絵、そんな絵を描きたいですね。その場に溶け込む“心地よさ”ようなものを描きたいですね。

—— どうして心地よさを求めているんですか?

やっぱり幸せでいたいからですかね。きっと絵を見てくれる人も、心地良さを感じたら幸せになるんじゃないかなって思うんです。

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—— どんな時に“心地よさ”を感じますか?

やっぱり森や山の中にいる時ですね。家の近くにも森のような山があって、よく行くんです。木に囲まれた空間に、私は心地良さを感じます。

—— 森の中でぼんやり過ごすんですか?

いえいえ(笑)。森の中をひたすら歩きます。木に囲まれた中を歩くと、思考がクリアになって気持ちいいんですよ。

—— 森で星を眺めますか?

森に行くのは昼間ですね。
残念ながら名古屋では、星があまり見られないんです。星を見るのは、旅行に行った時くらいかな。

私は旅行が大好きで、旅行に行くと夜、星が見える場所へ行って必ず見上げています。満天の星空を見て、絵はその時のイメージで描いています。

—— それでは最後に、画家としてこれから挑戦したいことを教えてください。

まだ完成はしていませんが、ストーリーも含めて絵本を作りたいですね。育児を経験したことも関係しているかもしれませんが、絵本で表現したいんです。海外の子供たちにも読んでほしいので、言葉がなくても理解できる絵本を作るのが夢ですね。

今まで描いてきた平面の絵と子ども達が楽しめる絵本、両方をやっていきたいと思ってます。

—— 画家としての覚悟を清々しくお話をされるむらせさんが印象的でした。
子育てを経て、画家、絵本作家としてとして活動の場を広げているむらせさんが、これからどんな絵を描かれていくのか、今後のご活躍を楽しみにしています。

文・写真:mecelo編集部

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Dataむらせゆか

画家、絵本作家