
やりたいことは、周りにいる人たちが気づかせてくれた ー 僕が “優しい” を表現しつづける理由【後編】
春・初夏、そんな爽やかな季節を体現させたかのような、心地よい写真を撮り続けるけんと。さん。後編では、けんと。さんの作品コンセプト「優しい写真」が生まれた背景や、ご自身も好きな言葉だという「個性」についてのこだわりなど、けんと。さんが大切にされている想いについてお話いただきます!
自分のやりたいことは、周りにいる人たちが気づかせてくれた
—— 「優しい写真」というコンセプトは、どのように生まれたのでしょう?
きっかけは、僕の写真を見てくれた人たちから、「(けんと。さんの写真の)優しい雰囲気が好き」だと感想をいただいたことです。それがすごく嬉しくて。
何でそんなに嬉しいのかって考えてみたら、周りの人たちが言ってくれたことで、自分が嬉しく感じることというのは、自分でもそれが好きだから、気に入ってるから嬉しいんだってことに気がついて。だから僕は、自分でもそれが好きだから、「優しい写真」を撮っているんだなって。それに気づいてからは、より「優しい写真」を意識するようになりました。
自分のやりたいことを、周りの人たちが気づかせてくれたという感じですね。
—— 人々との関わり合いの中から、自分らしさを見出されたということですね。
そうですね。写真自体は、いつも1人で撮っていますけど、見てくれる人がたくさんいればいるほど、もっとやろう!って、ポジティブな気持ちになれるタイプなので、もっとたくさんの方に見てもらいたいです。
いろんな方の視点で、僕の個性みたいなものを写真から感じ取っていただけたら嬉しいですね。

成功体験をきっかけに、自分の中の “個性” を意識するように
—— けんと。さんから、よく「個性」という言葉が出てきますが、ご自身にとって「個性」とはどのようなものなのでしょう?
「個性」という言葉が好きですね。人と違ったことをしたいと思っていますし。
写真(全般)を見るのが好きって言われるより、けんと。さんが撮った写真を見るのが好きって、言ってもらいたい。誰か特定の写真家の作品が好きということは、その写真家の個性を感じ取ってくれていて、且つ、それをよいと感じてくれているからだと思っています。
その人ならではの面を見てもらえている、そういう意味での個性という言葉はすごく好きですね。
—— 人と違ったことをしたいという気持ちは、昔からあったんですか?
昔は、そういう気持ちは無かったですね。というのも、調理の専門学校に入ってから、初めて人から「センスが良いね」とか「器用だね」って言われるようになって。そうやって、周りから褒めてもらえたことで、自分の中に「これをもっと頑張って、誰にも負けないようにしたい」という気持ちが芽生えてきたというか。
ちょうどそんな気持ちが芽生えだした頃に、調理の専門学校生たちが技を競う全国大会が開催されると聞いて、試しに出場してみたんです。そうしたら、地元(九州地区)の大会でベスト6に入賞して、全国大会まで進みました。
諸事情により全国大会には出場しなかったのですが、大会をきっかけに、自分にしかできないことがもっとあるんじゃないかって、個性というものを強く意識するようになりました。
—— 全国大会まで行けた!という成功体験が、ご自身の個性を意識するきっかけになったんですね。
はい。自分が本当に努力してやったらどこまで行けるのかなって、それを試したくて大会には出場しました。ちゃんと頑張れば、それ相応の成果はあるんだって、この大会ですごく実感しました。
—— ご自身の意思によって、よい結果を得ることができるんだと。
そうですね。実は、これをきっかけに、写真の道に進むことも決心できたんです。
それまでは、好きという気持ちだけで、写真を仕事としてちゃんとやっていけるのか、正直不安があってすごく悩んでいました。でも大会での経験から、写真も同じようにちゃんと頑張れば、なんとかなるんじゃないかって思えるようになったんです。それで、卒業後は料理ではなく写真の道に進みました。

何に対しても熱くなれなかった自分が、なぜか写真にはハマった
—— オンでもオフでも写真を撮られていて、正直モチベーションがどちらかに偏ってしまうようなことはありませんか?
自分では、写真を始めた頃から、写真に対する気持ちは何も変わっていないと思っています。
写真を仕事にしてしまうと、仕事のとき以外は撮らなくなるって、よく聞きますけど、僕はそれには全く当てはまらないというか、逆に撮りたい欲求はどんどん膨らんでいくばかりで(笑)。
—— なぜ、そこまで写真に対するモチベーションにあふれているのでしょう?
写真と出会う前までは、何に対しても興味がわかない人でした。何かに没頭したという経験もない。それが、なぜか写真に対しては最初からすごく興味がわいて、すぐにハマってしまいました。ここまで何かにハマったのは人生初で、自分でもびっくりしています。
しかも、仕事でどんなにたくさん写真を撮ろうとも、撮りたい欲求が下がることもなく。昔も今も、いろんなところへ出かけて行って、いろんな写真を撮りたいって、いつも思っています。
この何かを撮りたいという気持ちの強さは、カメラを初めて手にした頃からずっと変わらないです。
—— 写真のどういったところが、ハマれたポイントだと思いますか?
きれいな写真が撮れた時の満足感と、それを評価してくれる人たちがいることが嬉しくてたまらなかったことでしょうか。僕の中の「個性」を見つけてもらえた、評価してもらえたということが本当に嬉しかったので。

目標は、岩合光昭さん。大好きな猫を撮り続けていきたい
—— 今後はどんなことにチャレンジしていきたいですか?
昨年、フィルム写真のグループ展に初めて参加させてもらったんですけど、反応がすごく良かったので、今年も展示の機会をたくさん作っていこうと考えています。写真展を通して、たくさんの人に写真を見てもらいたいなと思っています。
けんと。さんの作品
—— こんなものを撮ってみたい、やってみたいということはありますか?
今は、何でも撮りたいです。でも一番撮りたいのは、やっぱり猫ですかね(笑)。
—— そんなに好きなんですね!(笑)
はい。ずっと実家で猫を飼っていたこともあって、猫がいる生活というのが僕にとっては当たり前になっていて。もう気づいたら、完全に猫派になっていましたね(笑)。なので、大好きな猫をこれからもっともっと撮っていきたいです。
そして、いつの日か、岩合光昭さんのような生活を送りたいなと思っています。
—— 専門学校での友人との出会いから、人生が大きく動き出したけんと。さん。そんなけんと。さんから放たれる “写真がすき!” というピュアな気持ちに圧倒されたインタビューでした。今後のご活躍を楽しみにしています!本日はありがとうございました!
文:mecelo編集部 / 写真:マスダヒロシ