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“やらない” という選択はなし!自分らしく生きることで、皆のやる気スイッチを押せたらいい【後編】

「これから描くだろう絵は、すでに未来では決まっているんです」「見えない誰かが、私に絵を描かせようとしているみたいで」ー 数々のびっくり発言を淡々と披露してくれたYoshie Sakakibaraさん。後編では、現在の作風に大きな影響を与えたという「ゼンタングル」との出会い、ご自身が描きつづけることの意味、役割について、お話いただきました。

一度きりのチャンスにすべてを込めて描く「ゼンタングル」

—— 現在の作風である、ペン画はいつ頃から描くように?

これも3年前からです。たまたま入ったカフェで展示することが決まったんですが、開催までには数カ月の準備期間がありました。その準備期間中に、なんとそれまでとは全く異なる作風、今のペン画に変わったんです。

きっかけは、そのカフェに初めて入ったときに展示されていた曼荼羅アートです。私、曼荼羅とか細かい模様が大好きで、そういう興味のそそるものを見ちゃうと「私もやる!」ってなっちゃうタイプで(笑)。

——(笑)。それで、曼荼羅アートを始められた?

まずは基本を学ぼうと思って講座を探しました。ただ、私ってなんでも独自にやりたい人なので、人に教えてもらうのは無理だなと。実際に曼荼羅を学べるところを探してみても、何度も教室に通わないといけないタイプの講座が多くて。そんな中1か所だけ、基本のやり方を1時間くらいでサクッと教えてくれるという講座を見つけて。しかも私の住む京都市内。ここなら1回だけ参加して、後は自己流で描けるなと思ったので、行ってみることにしました。

そこで出会った講師の方が「曼荼羅も楽しいけど、ゼンタングルも楽しいよ」って、私に「ゼンタングル」って言葉を与えてくれて。曼荼羅を学びに行ったのに、なぜかゼンタングルにすごく興味を持つことになってしまって(笑)。帰りに本屋さんでゼンタングルの本を探して、やっぱりこっちの方がしっくりくるなぁなんて思っていたら、急に今の作風ができ上がったんです。

—— ゼンタングルって、どのようなものなんでしょう?

長電話の最中に、メモ帳にぐるぐるぐるって何でもないものを無心で描くことってありませんか? それの延長のようなものだと私は思っていて。パターン(模様)を延々と描いていくんですけど、描くことで瞑想状態にもっていったり、今この瞬間に集中したり、精神を落ち着かせる効果があると言われているものです。

ゼンタングルが面白いのは、正解のパターンがないところですね。誰でも始めやすいようにパターンの手本はあります。でも、これが “正解の” パターンですよというものはなくて。正解がないので不正解もない。成功も失敗もないので、基本は下書きせず、いきなり本番を描き始めます。

その「下書きなしで描く」というところが、私はいいなと思っていて、作品でも動物の輪郭以外のパターン部分はすべて下書きなしで描いています。一度しかないチャンスにすべてを込めて描くというのが、緊張感があって私は好きなんです。

Yoshie Sakakibaraさんの作品

—— 印象的な詩やタイトルは、描き終わった後に付けているんですか?

描き終わった後ですね。ただ、できあがった絵を見てから考えるのではなく、描いている最中に、絵がタイトルになりそうな言葉などを主張してくるんです。

—— 絵が語ってくる感じ?

そういう風に私は捉えています。

—— 普段から印象的なフレーズを書き留めたりはされていない?

そういうことは、全くしないです。そんな器用なことできないですね(笑)。

ただ情熱のおもむくままに描き始めて、描いている途中、絵の方からこれはこういうことなんだよって、メッセージが伝わってきて。それらが最終的につながって、ひとつの作品になって完成します。

これから描くだろう絵は、すでに未来では決まっている

—— 絵の方から、どんな絵にするべきなのかを語りかけてくれるんですね。

ちょっと現実離れした話になるんですが、私には「未来には、すでにこういう絵が存在することが決まっていて、そこに向かって進んでいっている」ような感覚があるんです。

一般的に時間は、過去 → 現在 → 未来という方向に流れていくと考えられていますよね。私は逆で、未来 → 現在 → 過去という方向に流れていると考えていて。なので、未来というのは、実は、(一般的に考えられている)過去のようにすでに起こったことであって。未来には、すでに出来あがっている「原因」があり、現在という「結果」があると思っているんです。

例えば、この「ライオンの絵」に関していえば、この絵はすでに未来には存在していて、現在のまだライオンを描けていない私が、未来のライオンの絵に近づけていくような感覚。ちょっと変な話なんですけど(笑)。なので、決まっていることなんです、ライオンの絵ができることは。そこに向かって誘導されているような感覚なんです。

—— 最終的なイメージがあって、それに向かってペンを進めていく感じでしょうか?

うーん、自分の中に完成のイメージはないんです。ここはこうかな?こっちかな?なんて、質問を繰り返しながら描き進めていくんですが、その質問の回答、これは合っているなとか、それは間違っているなっていう感覚だけは分かるので、その感覚を頼りにペンを進めていきます。

—— その質問に答えてくれているのは、いったい誰なんでしょう?

それが謎なんです(笑)。前からよくあることではあるんですけど。

実際にあったのが、部屋の電球が切れてしまい、新しい電球を買いに行ったときのこと。型番の確認を忘れたまま電気屋さんに行ってしまって、どの電球を買っていいのかわからない状態だったんです。困っていたら声が聞こえてきて。それじゃないよ、これだよって。半信半疑で教えられた電球を買って帰って、付け替えたらぴったりでした。

—— はっきりとした言葉で聞こえてくるんですか?

感覚だけの時もあります。言葉で聞こえるときも、耳で聞くのとはちょっと違います。自分の内側で響いている感じですね。これは、絵に着色するときにも現れるんです。

この部分は青色かな?って思いながら、青色の絵の具を取るんですが、絵の具を取った瞬間にそれが正解かどうかがわかるんです。「あ、違った、ごめんごめん」って。「ここは青じゃなくて紫なんだね、そっかそっか」みたいな。

未来にいる自分なのか、見えない何かなのか、正体はわからないんですけど、絵のパターンについても色についても、「こうだよ、そうじゃないよ」って伝えてくる声の主が描いているような感覚です、もはや(笑)。

—— もはや、自分の仕業ではないと。

そうです。だからか、絵ができ上がっても「こんなんできたんやぁ!」って、他人事みたいな感覚になるんだと思います(笑)。

これは私の考えですが、私は頭の中を空っぽにしていないと描けないんだと思います。何かが乗り移っているのとは違うんですけど、私に絵を描かせたがっている存在が、私とは別にあるような気がしていて。なので、私はパイプ役というか、描くのに必要な手を貸している存在なのかなって思っています。

起こったすべての出来事が、絵を描くことにつながった

—— 岡山から京都に移られたのはいつですか?

3年前です。

—— 作風も、ちょうどその頃に変わったとおっしゃっていましたね。

はい、いきなり変わりましたね。土地が変わったからなのか、なんだか不思議ですけどね。

—— 京都へは、なぜ移られたんですか?

仕事の転勤です。

—— では、それも “たまたま” なんですね。自分の意志ではなかった。

そうです。でも結果として、移ってきた意味はあったように思いますね。京都に移って来なかったら、絵を再開することも、今の作風と出会うこともなかったと思いますし。

—— 京都に移って、割とすぐに絵を再開されたんですか?

いいえ。京都に移った当時は、全く描いていませんでした。引っ越しから半年くらい経って、ようやくいろいろ落ち着いた頃に、なんとなく散歩に出たくなって外に出たら雨が降ってきて、雨宿りしたカフェで絵が展示してあって、あなたも展示しますか?というお話につながって(笑)。

—— ちょうど落ち着いたタイミングで、次につながるきっかけが転がってきた?

そうです。

—— いいですね(笑)。

なんだか、仕組まれていますよね(笑)?

—— たしかに(笑)。ちょうど絵が描ける状態になった頃に、ギャラリーも兼ねたカフェに出会って。

そうです、そうです。しかも、私が興味を持つように曼荼羅の絵が展示されていて。私でも行く気になるような、1回で曼荼羅の基礎を学べる講座が住んでいる街で開催されていて。そしてそこで、ゼンタングルという言葉が与えられて(笑)。

—— これは、完全に仕組まれていますね(笑)。

もう仕組まれてるんなら、会社を辞めても大丈夫なんじゃないかって、会社も辞めちゃいましたしね(笑)。

私の活動が、その人が本来やりたかったことを始めるきっかけになったらいい

—— いくらポジティブなSakakibaraさんでも、会社を辞められるには決心が必要だったのでは?

昔から「絵では食べていけない」とか「そんな稼げないことは、趣味のままでいいじゃないか」とか、家族からさんざん言われ続けてきたので、私の中では、絵=お金にならないことという常識みたいなものができあがっていました。でも、それとは全く逆のことが京都で次々に起こったんです。

自分の絵が売れるという、これまで思ってもみなかったことが起こって。え?本当に?って。でもたった1回だけだし、なんなら試しにもう1回やってみようってことで、半年後にもう一度個展を開いたんです。そうしたらまた売れて。あれ?でもたった2回だし、あともう1回だけ試しにやってみようかなって、やったらまた売れた。

個展を開く → 絵が売れる、を繰り返すうちに、私の絵を必要としてくれている人がこの世界にはいるんだっていう手応えを感じるようになりました。

—— まぐれではなく、自分の絵を必要としてくれる方がいるんじゃないかと。

絵を買ってくださった方から、絵を見ているとすごく気持ちが安らぐと言っていただいたり。別の方からは、好きなことをしている私を見ていたら、自分も何かやりたくなって、ものづくりを始めたって言っていただいたり。

それを聞いて、私の活動が、その人が本来やりたかったことを始めるきっかけになってくれたらいいなって思うようになりましたね。楽しそうに生きている人に触発されて、自分も楽しく生きたい!って、やりたかったことにチャレンジできたらいいなって。

絵に限らず、表現活動って、ただ見てもらうだけでも、相手のスイッチを押すパワーがあるんじゃないかって思っています。つまらなそうに歌っている人よりも、楽しそうに歌っている人を見ている方が、その楽しさが伝染して、見ている側も楽しくなってくるじゃないですか。だから、本当にやりたいことをやったり、心から楽しいって思えることをやったりしていると、その情熱やパワーがどんどん周囲に連鎖していくのかなって。

—— 楽しそうにしている人、活き活きしている人を見ると、自分もポジティブな気持ちになりますね。そういえば、きっかけをつくってくれた、弾き語りの方のことはまだ覚えているんですか?

実は、今でもつながっています。私に衝撃を与えてくれた弾き語りの方ですが、今は東京で音楽活動をされています。そしてなんと、私がその方のCDジャケットの絵を描くことが決まったんです!その方は憧れの存在で、自分はいつもただ聴いている側の立場だったのに、自分がその方の表現活動に関われる日が来るなんて!これがここ最近、一番嬉しかったことですね。

—— きっかけをくれた方とご一緒にお仕事ができるだなんて!この展開は、まさに連鎖ですよね。Sakakibaraさんのまわりの表現者に希望を与えてくれる展開だと思います。

そうですね、なんだか自分でもすごく不思議です。出会ったのは、もう20年も前ですよ。そこに見えない何かを感じずにはいられないです(笑)。

良くも悪くも、自分らしく生きたい人のモデルケースになれたらいい

—— Sakakibaraさんのすごいところって、やりたいって思ったときに尻込みせず、一歩前に踏み出してきたところだと思っています。多くの方は心配したり、恥ずかしがったり、いろいろな理由から進むことを躊躇して、その一歩を踏み出すことができない。Sakakibaraさんには、ものごとをポジティブに捉えて進んでいける強さがあるんだなと感じました。

ありがとうございます。こんなやつでも、ためらわずに飛び込んでいって、もがきながらでも、なんとか生きているんだよって(笑)。私の活動を知って、あいつにできるなら俺にもできるさ!くらいに思ってもらって、動き始める人が出てきたら嬉しいなと。

今は、モデルケースになれたらいいなって思っています。良くも悪くも(笑)。成功したら成功したで、あいつでもできるんだ!って思ってもらって。逆にダメだったらダメで、ああいうことをしたら失敗するんだなって、教訓にしてもらえたら嬉しいですね(笑)。

—— (笑)。実際に会社を辞められて、作家活動一本になってみていかがですか?

不安はゼロではないです。でも、私に絵を描かせている存在がいて、それが私に「自分らしく楽しく生きなよ!」っていうメッセージを送ってくれているのであれば、絵を続けていけるだろうし。「いやいや、お前は真面目に働きなさいよ!」っていうメッセージなのであれば、そのうち絵も売れなくなって、就職することになるかもしれない。

ただ、今はまだどちらのメッセージなのかは分からないので、とりあえず前に進んでみようと思っています。経済的にピンチな状態ですら、自分からその状況を選択して、今ここにいるような気もしますし(笑)。

—— Sakakibaraさんなら、ピンチになっても慌てることなく、平然と対応していそうですね(笑)。

想像はしていたけど、実際にピンチになるってこういうことなのか!って(笑)。なんだか日々データを取っている感じに近いですね。この先どうなるかはまだ分かりませんが、もうしばらくはこのまま絵を続けていこうと思っています、ギリギリまでは!(笑)

—— ポジティブ・パワーにあふれたYoshie Sakakibaraさんは、まさに“引き寄せる”人物なんだと改めて感じました。今後の展開がとても楽しみです!本日はありがとうございました。

文・写真:mecelo編集部

Yoshie Sakakibaraさんインタビュー 前編はこちら

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IconYoshie Sakakibara

ペン画家